突然、足の親指に激しい痛みが…!
赤く腫れ上がる症状に驚く人も多くいます。
以前は40代以降の中年男性がかかる病気と言われていましたが、近年は30代の働き盛りの男性に増えています。
お酒を飲む人、肉食を好む人、肥満の人…要チェックです。
1.急増している痛風
「痛風」という変わった呼び名。
もともと、中国から伝わってもので、中枢神経系の病気を意味する「風疾」からきていると言われています。
古くから知られており、紀元前3500年のパピルスにも記録されているほどです。
日本で痛風患者が現れ始めたのは1898年。
最初はわずかな人数で、1950年代でも100人足らずでした。
急に増え始めたのは1960年代以降、食生活の変化が影響しています。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、現在は100万人超に。
しかも、発症年齢が20代からと若くなっており、特に30代の働き盛りの男性に急増しているという現状です。
突然の激痛に悩まされる前に原因を知っておきましょう。
2.痛風の原因になる尿酸とプリン体とは?
2-1.尿酸
痛風の原因は体内にたまりすぎた尿酸です。
そもそも、尿酸とはどのような物質なのでしょうか?
エネルギーの代謝や細胞が壊れる時に産生される廃棄物で、無味無臭、白色です。
生命活動の燃えかすとも言われています。
また、人間の体内では分解しきれないため、腎臓から尿と一緒に排泄されす。
(おすすめ記事→腎臓の異常を見つけるクレアチニンクリアランスの基準値と計算式とは!?)
水に溶けにくい、つまり溶解度が低いという特徴もあります。
溶解度は血液や尿といった溶かす液体が酸性に傾いていたり、温度が低くなったりすることでさらに溶けにくくなります。
そして、溶解度を超えた尿酸は溶けきれなかった分が尿酸ナトリウムとして結晶化し、結晶化した尿酸が関節などに沈着すると痛みが生じることになります。
女性よりも圧倒的に男性に多い痛風。
もともと、女性は尿酸の量が男性の3分の2しかないからです。
また、エストロゲンなど女性ホルモンが尿酸の排泄を促進しているからでしょう。
2-2.尿酸の原料、プリン体
尿酸はどのようにつくられるのでしょうか?
尿酸の原料となるのはプリン体という物質です。
実は、尿酸もプリン体の一つ。
プリン体がつくられる方法は3つあります。
一つは、細胞の核にあるDNAやRNAといった核酸が分解することによってできます。
新陳代謝が行われている人間の体。
常に新しい細胞が生まれて、古い細胞が死んで分解されています。
その分解の時に細胞の一部である核酸も分解されることによりプリン体ができるというわけです。
二つめは、エネルギーの代謝によって生成されます。
エネルギーのもとになるのは高エネルギー物質ATP(アデノシン三りん酸)。
生命活動などの運動・反応・代謝によってADP(アデノシンニりん酸)に分解されて、りん酸という物質と結合して再びATPになります。
しかし、急激にエネルギーを使うとADPがたくさんでき過ぎてプリン体になってしまいます。
三つめは、食品に含まれているプリン体を体内に摂り入れることです。
ただし、食物の中のプリン体は腸内細菌によって分解されるものもあります。
3.痛風になる7つの原因
3-1.脂質・糖質が多い食生活
以前は、米などの穀類を主食として、魚や野菜を摂っていた日本の和食。
第二次世界大戦後から食事が欧米化して、高脂肪食や高タンパク質、高カロリーの食事が多くなり痛風患者が急増しました。
以前は「贅沢病」、現在は「生活習慣病」と呼ばれるようになったのもそのためです。
特に、インスタント食品やファーストフードなど動物性脂肪を多く食べる人は痛風になりやすいでしょう。
また、朝食抜きや深夜に摂る食事、外食が多いといった不規則な食生活も原因になります。
3-2.アルコールの多飲
尿酸値を上昇させるアルコール。
尿酸代謝に直接的に影響します。
ビールに多量に含まれているプリン体ですが、痛風になりやすい原因はそれだけではありません。
エネルギー源として体内で燃焼される時、その代謝過程で尿酸の産生が促進されたり、尿酸の排泄が低下したりします。
また、一度に多量のアルコールを飲むと、多量の有機酸が産生されて尿が酸性化してしまいます。
特に、蒸留酒のウイスキーやブランデー。
無機塩類の含有量が多く、尿の酸性化を招いてしまうでしょう。
さらに、高エネルギーのアルコール。
飲み過ぎだけでなく、ついつい食べてしまうおつまみ。
摂取カロリーも気になります。
珍味類には高プリン体食品が多いため、痛風の原因になるでしょう。
特に、アルコールの影響が出やすい痛風患者は大量のアルコールを長い間飲み続けている大量飲酒常習者です。
3-3.肥満
食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足が招く肥満。
肥満になると尿酸の生成が促進されて尿酸値が増加します。
特に、りんご型肥満と呼ばれる腹部に脂肪が蓄積しているタイプに多いでしょう。
内臓にある遊離脂肪酸が肝臓で代謝されて中性脂肪がたくさんつくられる時、尿酸合成が活性化するためです。
(人気記事→脂肪肝の診断に用いられる数値とは?ALT(GPT)、 AST(GOT)、γ-GTPを分かり易く解説!)
実際、痛風患者の50〜80%は肥満を合併しています。
内臓脂肪がたまってお腹が突き出た中年太り。
消費カロリーよりも摂取カロリーが多い人は痛風になりやすいでしょう。
3-4.ストレス
働き盛りで職場でも家庭でもストレスが多い30代男性。
ストレスを感じると自律神経の働きが乱れます。
通常より交感神経が強く働くため、心身の緊張状態が長く続いてエネルギーを余計に消費することに。
その結果、代謝が活発になって尿酸の産出量が増えてしまいます。
また、ストレスが蓄積されると体内循環や排泄が滞ってしまいます。
尿酸の排泄もうまく行われず体内にたまって尿酸の量が上昇するでしょう。
3-5.激しい運動や足を圧迫する運動
無酸素運動などの激しい運動は尿酸値を急激に上昇させてしまいます。
これは、エネルギーの消耗によって尿酸が増えたり、腎臓への血流の減少によって、尿酸の排泄機能が低下するためです。
特に、次のような運動です。
筋トレなどの腕立て伏せや腹筋・背筋運動。
ジムのトレーニングマシーンなどで筋肉の一部を酷使する運動。
サッカーやテニスなど走り回る球技運動。
このような尿酸値を上昇させる激しい運動は、プロスポーツ選手でも痛風になる人がいます。
また、足の親指に起こりやすい痛風。
柔道や相撲、ゴルフなど足の指を圧迫する運動も痛風になりやすいでしょう。
3-6.遺伝
一般に、痛風患者の約20%は親や兄弟、親戚に痛風の人がいます。
家族が同じ生活環境の中で長く暮らすことによって、共通要因も多くなるでしょう。
痛風家族歴があるかどうかに関わりなく、家族に痛風患者がいる特に30代の男性は定期的な尿酸値の検査を受けたほうが良さそうです。
3-7.疾病・薬物
高血圧の人が飲む血圧降下剤。
ナトリウムの排泄を増加させて血圧を下げる降圧利尿剤があります。
その代表であるサイアザイド系薬剤は服用すると尿酸値が上昇することがあります。
これは、血管内の水分が減少して血液が濃縮され、腎臓での尿酸の排泄機能の働きが悪くなるためです。
また、むくみをとるための利尿剤であるフロセマイドや喘息薬も尿酸過剰に。
さらに、DNEやRNAといった核酸を多く含んでいる健康食品も尿酸値を上げてしまいます。
まとめ
忙しい毎日、暴飲暴食や偏食などしていませんか?
ある日強烈な痛みがでるまで自覚症状のない痛風。
尿酸値を確実に上昇させる原因があります。
痛風の始まりは産生される尿酸と排泄される尿酸のバランスの崩れです。
肥満気味で尿酸値が高いとさまざまな合併症も高くなりますので注意しましょう。
HANA
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