「沈黙の臓器」とも言われている腎臓。
実は、腎臓がきちんと機能しているかを調べるために「クレアチニンクリアランス」という検査が役立ちます。
生活習慣病と深い関係のある腎臓。
予防のために役立つ知識をご紹介します。
1.生体維持にとって大切な臓器!腎臓の4つの働きとは?
そもそも、腎臓はどのような働きをしているのでしょうか?
背骨の両側にひとつづつある腎臓の大きさは長さ約12㎝、厚み約3㎝、幅約6㎝、重さ約120〜150g。
握りこぶしよりも少し大きくてソラマメのような形をしています。
腎臓の主な働きは4つあります。
1-1.血液を濾過にする
血液には必要な栄養をエネルギー源として使った細胞の老廃物が残りますが、尿や便として体外へ排泄する前に老廃物だけを濾過しなければなりません。
濾過される血液量はなんと1日約150ℓ!
毎日24時間働いている腎臓は私たちが眠っていても休むことがありませんから大変な仕事ですね。
1-2.尿を作り出す
腎臓で濾過された血液は水分や老廃物が取り除かれ、尿の元である原尿をつくります。
原尿にはカルシウムやカリウム、ナトリウムなどの電解質やアミノ酸、水分や糖質など多種類の体に必要なものが含まれています。
そのため、尿細管と呼ばれる部分で再吸収されて血液中に戻ります。
再吸収される分は実に99%も!約150ℓもあった原尿が1日で排泄されるときの量は、たった1%の1〜1.5ℓになります。
1-3.水分や電解質を一定に保つ
私たちの体重の約60%は水分で、細胞の内外を血液など体液として流れています。
腎臓が体の状況に合わせて水分量やナトリウムなどの電解質を調整して、一定に保ってくれるおかげで生きることができています。
1-4.ホルモン分泌やビタミンD活性化をする
腎臓は血圧を調節したり、血液の生成を促すホルモンも分泌しています。
これらのホルモンは血圧が下がると上げたり、血液中の酸素不足によって血が薄くなると赤血球を増やします。
また、体内のビタミンDを活性させてカルシウムの吸収を促すため、歯や骨が強くなります。
2.腎臓の働きがわかる!4つの検査とは?
生体維持にとって大切な働きのある腎臓。
弱ってしまうと、さまざまな弊害が起きてしまいます。
腎臓の働きが弱って機能が低下しているかどうかを調べる方法は大きく分けて4つあります。
「尿検査」や「血液検査」、「画像検査」や「腎生検」です。
実は、健康診断などで行われる血液検査で調べるのは赤血球や白血球の数。
腎臓の働きを知るための血液検査は関係する物質の量を測定する生化学検査を行います。
この関係する物質の一つがクレアチニンです。
(関連記事→クレアチニンって何?健康診断で高いと言われた場合の数値の下げ方)
3.血液中に含まれている物質!クレアチニンとは?
前回も、ご紹介しましたがクレアチニンは体の血液中に含まれている物質です。
体を動かす時に使う筋肉がアミノ酸を燃焼しますが、この時生じる老廃物がクレアチニンです。
老廃物ですから通常は腎臓で処理されて尿中に排泄されますが、腎臓の機能が低下している場合、十分に排泄されないクレアチニンが血液中に残ってしまい増加してしまいます。
老廃物が体内に溜まっていくと、さまざまな不調が表れるでしょう。
腎臓の働きと関係のある幾つかの臓器に障害が出てきますから、クレアチニンの量を調べることは大切です。
4.腎臓のフィルター!糸球体(しきゅうたい)の働きとは?
クレアチニンを腎臓で処理する時に活躍するのが糸球体と呼ばれる組織です。
毛細血管が集まってできた毛糸玉のようなもので、尿細管と呼ばれる細い管の集合体につながっています。
糸球体はフィルターのようです。
腎臓に流れ込んだ血液を濾過して、老廃物のないキレイな血液にして、体内に再吸収されるようします。
片方の腎臓の中にある糸球体の数はなんと約100万個!
濾過装置ともいうべき糸球体は腎臓を良い状態に保っているんですね。
本来、非常に緻密にできている糸球体。
残念ながら、なんらかの炎症や異常によって支障が生じて、濾過機能が低下することがあります。
5.糸球体の障害!クレアチニンの基準値とは?
クレアチニンはこの糸球体の障害を測定することができます。
クレアチニンには基準値があります。
男性は0.61〜1.04㎎/㎗、女性は0.47〜0.79㎎/㎗です。
ただし、筋肉の量が多い人は高くなりますので、基本的に男性は女性よりも10〜20%高値になります。
また、筋肉量が多くなるスポーツをしているとか、仕事柄筋肉を使うことが多い男性は、男性の基準値よりもさらに高くなるでしょう。
自分の筋肉量をもとに正確に測定することをオススメします。
6.採血のみの1〜2分!クレアチニンの検査法とは?
クレアチニン検査は採取した血液に酵素を使った試薬を加え、物質の濃度を色調変化から決定する比色計で色の変化を測定します。
検査の前日と当日の激しい運動は避けた方が良いでしょう。
この検査の値は食事や水分の摂取の影響は受けにくいため、食事はいつも通りでかまいません。
7.腎臓の障害!クレアチニンで判定する目安とは?
クレアチニンの検査結果で腎障害がどのくらい進んでいるかも分かります。
1.5㎎/㎗を超えると腎不全、2.4㎎/㎗を超えると重症です。
さらに、5㎎/㎗を超えると回復が難しくなり、10㎎/㎗を超えると人工透析が必要になります。
高値の場合は急性腎不全や慢性腎不全、尿毒症や尿路閉塞、心不全や肝硬変などの病気が考えられます。
8.軽度の腎機能障害!クレアチニンの落とし穴とは?
実は、基準値を超えている時点で腎機能は半分以下にまで低下してしまっています。
実際、クレアチニンによる糸球体の変化は濾過能力が30〜40%くらいまで低下しなければ分かりません。
つまり、軽度の腎臓機能の障害を起こしているかどうかは判定しにくいんですね。
腎臓は一度傷つくと治りにくい繊細な臓器ですから、腎機能の障害がひどくなる前に測定する方法があったら良いですよね。
そこで、もっと早めに腎機能の低下を知る方法があります。
それがクレアチニンクリアランスです。
9.腎臓病の指標!クレアチニンクリアランスとは?
クレアチニンクリアランスは、初期の腎臓病の診断には不十分なクレアチニンの測定を補ってくれる検査です。
クレアチニンは糸球体の障害を測定することができますが、クレアチニンクリアランスは糸球体の濾過能力を調べることができます。
この検査によって、腎臓の機能が正常かどうかが分かります。
また、腎臓病の大切な指標ともなりますので、腎機能がかなり低下している場合、人工透析を始めるかどうかの目安にもなるでしょう。
10.糸球体能力の低下!クレアチニンクリアランスで測定する方法とは?
通常、老廃物であるクレアチニンは腎臓の糸球体で濾過された後、ほとんどが再吸収されることなく、尿中に排泄されます。
実は、クレアチニンクリアランスの「クリアランス」とは「除去する」という意味があります。
常に一定量が除去(クリアランス)されているクレアチニン。
一定時間内に除去される量を調べることによって、糸球体の濾過能力を知ることができるでしょう。
クレアチニンクリアランスでは、腎臓の糸球体で1分間に何㎖の血液が濾過されているのかを調べます。
11.採尿と採血で2時間!クレアチニンクリアランスの2種類の検査法とは?
クレアチニンクリアランスの検査は、一般的な短時間法と24時間法の2種類あります。
短時間法の検査は排尿をすませた後、水500㎖を飲み、その1時間後に尿を全部排出させて、その時刻を記録しておきます。
その30分後に採血を行い、60分後に採尿を行なって、血液と尿に含まれているクレアチニンを測定します。
1時間で尿に排泄されたクレアチニンの量から、1分間のクリアランス(除去された)量を算出します。
また、24時間法の検査の場合は1日分の尿を蓄尿して測定します。
検査前は前日から運動を控えましょう。
12.糸球体の濾過能力!クレアチニンクリアランスの基準値と計算式とは?
クレアチニンクリアランスにも基準値があります。
短時間法は80.0〜200.0㎖/分、24時間法は93.0〜238.0ℓ/1日です。
判定の目安ですが、70㎖/分以下であれば腎機能が低下しています。
さらに低下が進んで、30㎖/分以下であれば人工透析の必要が生じるでしょう。
算出法の計算式です。
【クレアチニンクリアランス=クレアチニンの尿中濃度(㎎/㎗)×1分間あたりの尿量(㎖)÷クレアチニンの血中濃度】
(※但し、1分間あたりの尿量は、採取した尿量の60分の1)
また、異常値の場合は慢性腎炎や腎不全、尿毒症などの病気が考えられます。
まとめ
普段、なんとなく感じる不調。
でも、仕事のことを考えると休んではいられないですよね。
そこで、体の不調の原因を見つけるのに役立つのが定期健診です。
定期検診では体の機能の弱っている箇所を見つけて、対処方法を知ることができるでしょう。
実際、各臓器の機能が数値として表れますので、不調の原因を見つけやすいですね。
特に、生活習慣病になりやすい30代〜40代は体の変化を感じやすい時期ですから、早めに発見できるという利点もあります。
腎臓の働きは生活習慣病と密接な関係があります。
生活習慣病の二次的な腎障害も増えていますので早期に治療しましょう。
HANA
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