健康診断の結果に愕然。
LDL(悪玉)コレステロールが基準値よりも高い…
気になってはいても、大丈夫…とそのままにする人が多いかもしれません。
病気を予防するために、LDL(悪玉)コレステロールの基準値についておさらいしましょう。
1.コレステロールの3つの働きとは?
コレステロールは体内にある脂質の一種です。
体内でさまざまな働きをします。
1.体を構成している約60兆個もの細胞の膜を作るときの成分の一つになります。
2.副腎皮質ホルモンや、性ホルモンなどホルモンを作るときの材料になります。
3.食べ物を消化したり、吸収したりするために必要な消化液の一種である胆汁酸を作るときの材料になります。
体にとって重要な働きをする必要不可欠な成分なのです。
(関連記事→善玉(HDL)・悪玉(LDL)コレステロールって何?脂質異常症や値が低い場合の危険性)
2.コレステロールが作られる2つの方法とは?
コレステロールはどのように作られるのでしょうか?
一つは、食べ物から取り入れられます。
コレステロール全体の約2〜3割にあたります。
二つめは、主に肝臓でつくられます。
残りの約7〜8割にあたりますね。
そして、肝臓から血液によって全身に運ばれます。
困ったことに、脂質であるコレステロールは脂なので、水と脂の関係から血液には解けないため、血液中では分離してしまうんですね。
そこで活躍するのがリポタンパクと呼ばれる物質です。
実は、コレステロールは血液中で分離しないために、リポタンパクと呼ばれるカプセルに入れられて運ばれます。
3.血液中の運び屋「リポタンパク」5つの種類とは?
リポタンパクには5つの種類があります。
一つは、「カイロミクロン」と呼ばれるリポタンパク。
食事からとった脂肪を小腸で吸収した後、肝臓に運びます。
二つめは、「VLDL」と呼ばれる超低比重リポタンパク。
三つめは、「LDL」と呼ばれる低比重リポタンパク。
四つめは、「HDL」と呼ばれる高比重リポタンパク。
これらは、肝臓に運ばれてコレステロールに作り替えられた脂肪を、末梢組織(細胞)に運びます。
五つめは、「IDL」と呼ばれる中間比重リポタンパク。
これは、コレステロールに直接関係しません。
4.「リポタンパク」が運ぶコレステロールの多い順とは?
5つの種類があるリポタンパク。
実は、脂質であるコレステロールの割合が最も多いのが、LDLつまり低比重リポタンパクなんですね。
それで、LDLは悪玉コレステロールとも呼ばれています。
ちなみに、それぞれのリポタンパクに含まれるコレステロールの割合の多い順です。
1番は、LDLの低比重リポタンパクで40〜50%
2番は、HDLの高比重リポタンパクで17〜23%
3番は、VLDLの超低比重リポタンパクで15〜18%
4番は、カイロミクロンで4〜15%
5.コレステロールが最も多いLDLの働きとは?
コレステロールを末梢組織(細胞)に運び終えたLDLの低比重リポタンパク。
驚いたことに、末梢組織(細胞)でコレステロールをおろした後、HDLの高比重リポタンパクになるのです。
そして、今度は余分なコレステロールを拾い集めて、再び肝臓に戻ります。
その後、肝臓に戻ったコレステロールから胆汁が作られます。
さらに、胆汁は小腸に分泌されて脂肪の吸収を助ける働きをします。
6.以前の測定基準は総コレステロールだけ!?
検査で調べるコレステロールには3つの種類があります。
HDL(善玉)コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、総コレステロールです。
以前は、血液中のコレステロールがまとめて測定されていたことをご存知でしょうか?
つまり、総コレステロールだけなのです。
血液中に総コレステロールが多いと動脈硬化になりやすく、心臓発作や脳卒中が起こりやすいため、血液中のコレステロールを減らすことが大切であると言われていました。
(オススメ記事→筋トレでコレステロールが減らせる!?筋トレの意外なメリット)
7.測定基準が変化して明らかになったことは?
しかしその後、コレステロールにも幾つかの種類があることが分かりました。
それが、HDL(善玉)コレステロールやLDL(悪玉)コレステロールのことです。
HDL(善玉)コレステロールやLDL(悪玉)コレステロールの測定ができるようになると、それぞれの働きも明らかになりました。
ちなみに、LDL(悪玉)コレステロールが高い場合、高コレステロール血症、または高LDL(悪玉)コレステロール血症と診断されるでしょう。
8.LDL(悪玉)コレステロールは動脈硬化が進む!
LDL(悪玉)コレステロール値から分かることは、動脈硬化を起こす危険性のある成分が増えていないかという点です。
そもそも、なぜLDL(悪玉)コレステロールが高い人は動脈硬化が進むのでしょうか?
血液中のLDLである低密度タンパク質は肝臓で作られたコレステロールを末梢組織(細胞)に運びます。
これが多くなると、末梢組織(細胞)に運ばれたコレステロールが余分に残ってしまいますね。
この余分に残ってしまったコレステロールが血管壁に溜まってしまい、動脈硬化を進めてしまうからなのです。
9.LDL(悪玉)コレステロールの基準値と異常値、その対処法とは?
9-1.LDL(悪玉)コレステロール値70〜139mg/㎗
LDL(悪玉)コレステロールの基準値は70〜139㎎/㎗です。
以上なしと判断される数値です。
基準値内の数値は日頃の食生活や生活スタイルを表していますので、バランスのとれた食事や腹八分、適度な運動など意識的に健康に気を付けていることでしょう。
でも、油断は禁物です。
LDL(悪玉)コレステロールの異常値につながるのは、食生活の乱れや運動不足、アルコールの飲み過ぎや喫煙、ストレスなど、いわゆる不摂生です。
対処法としては、
<1.偏った食事や運動不足を避ける>
太っていても痩せていてもなることがあるメタボリックシンドロームは体内に過剰に蓄積された体脂肪が原因です。
脂質が多いLDL(悪玉)コレステロールは血管を詰まらせて動脈硬化を進行させてしまいます。
特に30代からメタボリックシンドロームになりやすく、50歳前後からLDL(悪玉)コレステロール値の上昇になりやすいため、引き続き偏った食事や運動不足にならないよう気をつけましょう。
<2.高血圧や糖尿病に注意する>
もともと高血圧や糖尿病があったり、中性脂肪高値やHDL(善玉)コレステロール低値の人はLDL(悪玉)コレステロール値が高くなったりしやすいため注意しましょう。
<3.ストレスを解消する〉
仕事で忙しい働き盛りの30〜40代は長時間労働や人間関係の悩みなど毎日のストレスが溜まりやすいですね。
ストレスを抱えると疲労感も慢性化してしまいます。
自分にとってリラックスできる時間を確保して、ストレス解消法を続けていきましょう。
9-2.LDL(悪玉)コレステロール値140〜149mg/㎗
LDL(悪玉)コレステロール値が140〜149㎎/㎗は軽度の上昇です。
日常生活に支障はありませんが、軽度の異常があります。
病気の初期の可能性があるため、生活習慣の改善を心がけて、次回の健康診断で経過をみることが必要でしょう。
実は、血液中のコレステロールが多くなっているこの状態は高脂血症と呼ばれています。
高脂血症は特に自覚症状がないため、油断してしまいがちな異常値とも言えるでしょう。
この状態が続く場合、動脈硬化が進み心筋梗塞や脳梗塞などの命の危険に関わる病気につながっていきますので、LDL(悪玉)コレステロール値の改善が必要です。
高脂血症の診断は血清1㎗中に含まれている総コレステロール値とHDL(善玉)コレステロール値、中性脂肪値から行われます。
また、高脂血症には4タイプありますが、LDL(悪玉)コレステロールが直接関係するのは高LDL(悪玉)コレステロール血症と呼ばれるもので、LDL(悪玉)コレステロール値が140mg/㎗以上の場合です。
ちなみに、高コレステロール血症と呼ばれるタイプもありますが、これは血液中のすべてのコレステロールが含まれており、特にLDL(悪玉)コレステロール値が高い人は総コレステロール値も高いため、高コレステロール血症にもなりやすいでしょう。
LDL(悪玉)コレステロール血症と高コレステロール血症それぞれの対処法です。
LDL(悪玉)コレステロール血症を改善するために必要な対処法は、基本的にLDL(悪玉)コレステロール値が高い人がしやすい食生活にポイントがありますが、特に行うと良いコツを挙げてみます。
<1.肉が好きでよく食べるが、魚や大豆製品はあまり食べないのはNG>
毎日、肉類を食べていて、たんぱく質のほとんどを肉からとっていませんか?
よく働いた後のスタミナ満腹の肉料理はとても美味しいですが、できるだけ肉類は週に2〜3回くらいに抑えて、他の日は魚や大豆製品を摂りましょう。
<2.多量に油を使う調理法の料理が好きでよく食べるのはNG>
食材を炒めたり揚げたりする時に使う油が多いほど脂質の摂り過ぎになってしまい、LDL(悪玉)コレステロール値が高くなってしまいます。
野菜の割合を増やしたり、肉を調理する時に蒸したり茹でたり焼いたりして使う脂の量を減らしましょう。
<3.甘いもの、特にチョコレートやアイスクリームが好きでよく食べるのはNG>
チョコレートやアイスクリームなどは脂肪分がたっぷりのため、脂質の摂り過ぎになります。
仕事で疲れて少し休憩した時や小腹がすいた時、また食後のデザートにはちょっと食べたくなりますが、できるだけ食べる回数を減らしたり、和菓子やシャーベットなどに変えたりするのもオススメです。
<4.卵を毎日食べるのはNG>
コレステロールが多いため脂質の摂り過ぎになってしまいます。
他にも、コレステロールが多い食品がありますし、卵だけが原因とは考えられませんが、卵は料理やスウィーツなどで調理されることが多いため、もし毎日卵を食べているなら数を減らしましょう。
もちろん、他のコレステロールが多い食品も減らしてください。
高コレステロール血症の対処法は、総コレステロールに含まれているLDL(善玉)コレステロールが多い人は脂質やコレステロールが含まれている食品を控えるとともに、特に野菜を多く摂りましょう。
野菜の中でも色の濃い緑黄色野菜や、食物繊維を多く含んでいる食品を食べるようにしましょう。
9-3.LDL(悪玉)コレステロール値150〜199mg/㎗
LDL(悪玉)コレステロール値が150〜199㎎/㎗は中等度の上昇です。
病気の可能性が強いため、生活習慣を改善して再検査を受けましょう。
場合によっては、専門医療機関で病気の原因を見つけるための精密検査が必要です。
すでに、LDL(悪玉)コレステロール値が140mg/㎗以上の軽度の上昇範囲から高脂血症が進んでいます。
このまま、血管内にLDL(悪玉)コレステロールが増え続けるとどうなるのでしょうか?
血管壁にコレステロールが入り込んで溜まっていき、粥のようにもろくなった粥種(アテローム)ができます。
そして、アテロームを覆っている繊維性皮膜が薄くなって、血管内が狭くなってしまいます。
実は、このアテロームが破裂すると血栓ができて、血管が詰まり心筋梗塞や脳梗塞を招いてしまうのです。
がんに次ぐ日本人の死因第2位はこの動脈硬化性疾患ですから、コレステロール高値の脂質異常にならないために、LDL(悪玉)コレステロール値を基準値内にまで改善することが必要です。
対処法としては、脂質が異常である原因は体質もありますが、やはり過食や運動不足を避けることは徹底した方が良いでしょう。
特に、アルコールの過剰摂取は避けてください。
また、糖尿病や甲状腺機能低下症、腎臓病の一つであるネフローゼ症候群などの病気が原因となることがありますので、そのような症状がある場合注意しましょう。
なによりも、まず再検査を受けましょう。
検査結果次第では精密検査の必要が生じるかもしれません。
どのように改善すれば良いのか相談して、専門家の指導に従いましょう
9-4.LDL(悪玉)コレステロール値200mg/㎗以上
LDL(悪玉)コレステロール値が200㎎/㎗は高度の上昇です。
病気と考えられますので、治療が必要です。
実は、WHO(世界保健機構)によると高脂血症はさらに6種類に分けられます。
その診断方法はリポタンパクの種類によって分けられます。
コレステロールは血液中でリポタンパクの形で存在していますが、どのリポタンパクが多いかによってタイプを分類することができ、それぞれの原因を見分けて適切な治療法を行うことができるのです。
ちなみに、LDL(悪玉)コレステロール値が220mg/㎗以上の場合、増加するのはLDLの低比重リポタンパクです。
男性の高脂血症の3分の1がこのタイプと言われています。
ある日突然、血管が詰まって命にかかわるといった状況も考えられるでしょう。
対処法はまず病院へ行き、専門家の指導を受けましょう。
通常、総コレステロールはLDL(悪玉)コレステロールを多く含んでいますが、総コレステロール値が220mg/㎗以上だと、心筋梗塞を発症する危険が急激に高まると言われています。
脳や心臓、腎臓や他の箇所など、精密検査ではより詳しく原因を見つけることができ、必要な治療を行うことができます。
10.LDL(悪玉)コレステロールと年齢の関係とは?
LDL(悪玉)コレステロールは年齢によって変化があります。
50歳前後から加齢とともに値が高くなるため、高齢の男女は値が高くなるでしょう。
特に、LDL(悪玉)コレステロール値が140㎎/㎗以上の高LDLコレステロール血症が高齢者に多いのはそのためです。
できるだけ、LDL(悪玉)コレステロール値は140㎎/㎗未満にしましょう。
理想は、100㎎/㎗程度にまで下げることです。
11.LDL(悪玉)コレステロールが高い時に招きやすい5つの病気とは?
LDL(悪玉)コレステロールが高い場合、動脈硬化性の病気の危険も増えていくでしょう。
例えば、
・糖尿病
・甲状腺機能低下症
・脂肪肝
・ネフローゼ症候群
・閉塞性黄疸などです。
実際、LDL(悪玉)コレステロールは血中コレステロールの約75%も占めているため、脂質異常症や動脈硬化症などの病気を診断する最も良い指標といわれています。
12.LDL(悪玉)コレステロールを高くする6つの症状とは?
特に、LDL(悪玉)コレステロールが高くて、それに他のいくつかの症状が伴うと、よりいっそう動脈硬化が進みます。
例えば、
・高血圧
・糖尿病
・中性脂肪高値
・リポたんぱく高値
・高インスリン血症
・HDL(善玉)コレステロール低値などです。
もともと、このような症状を持っているなら、リスクが大きくなって動脈硬化による合併症が起きやすくなるでしょう。
13.LDL(悪玉)コレステロール値を算出するための計算式とは?
検査機関によって、LDL(悪玉)コレステロール値が記載されていないことがあるかもしれません。
それでも、算出できる計算式がありますよ。
〈中性脂肪値が400㎎/㎗以下の場合〉
LDL(悪玉)コレステロール値 = 総コレステロール値 – HDL(善玉)コレステロール値 – ( 中性脂肪値 / 5 )
〈中性脂肪値が400㎎/㎗以上の場合〉
LDL(悪玉)コレステロール値 = 総コレステロール値 – HDL(善玉)コレステロール値 – ( 中性脂肪値 × 0.16 )
※このように、計算式で求めることができますが、担当医と相談してみることをオススメします。
まとめ
動脈硬化を進ませるLDL(悪玉)コレステロール。
脳卒中や心筋梗塞など、命にかかわる重大な病気につながる危険があります。
検査結果で高い値がでても、体調はそれほど変わらないためそのままにしておく人が多いです。
健康にどのような影響があるのか、高いままにしておくとどのような危険があるのかを、あまり理解していないからかもしれません。
基準値より少しでも高い値であれば、警告として受け止めましょう。
検査値をしっかりチェックして、きちんと対策することをオススメします。
HANA
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