「痛風」。
その痛みは「骨折レベルの痛みが数日間続く」「刃物で指を切断されるみたい」「ペンチで指を引きちぎられる感じ」など、あらゆる病の中でも最強レベルと言われています。
できることならそんな病気にはなりたくないものですが、30代から40代にかけての男性にとっては他人事ではないのです。
今回は痛風を予防するための意外な方法をご紹介します。
1.発症は30代から
風が吹いても痛いという「痛風」。
痛風患者の98%は男性です。
そのほとんどが40代以上で、初めて発症するのは30代と言われています。
以前は50代以上が中心と言われた痛風も、年々発症年齢が下がっているのです。
つまり30~40代にとって、痛風は目の前にある危機と言えるでしょう。
痛風の大きな原因と言われているのが「プリン体」です。
そのため、通常のビールをプリン体カットのものに切り替えたり、プリン体を多く含む食品を避けたりといった努力をしている人も多いかもしれません。
しかし、実は痛風の原因はプリン体だけではなかったのです。
2.そもそも「痛風」とは?
痛風を予防するための方法をご紹介する前に、まず「痛風」についてそれがどのような病気なのか、なぜ発症すると激痛を伴うのかといった基本的な知識について、おさらいをしておきましょう。
(関連記事→痛みが治まっても我慢は禁物~痛風予備軍・痛風発作の症状と痛風と間違えやすい症状~)
痛風というのは、簡単に言えば身体の中の「尿酸」が増えすぎてしまった状態です。
尿酸というのは、食べ物などを通じて体内に入ったたんぱく質などの栄養素を分解したあとにできる最終的な産物で、いわば産業廃棄物のようなものです。
通常なら、尿酸は汗や尿とともに体外に排出されて身体の中のバランスが取れますが、尿酸には「水に溶けにくく濃縮が可能」という特徴があります。
尿酸は身体のバランスを保つために必要な物質で、低すぎても不調の原因となってしまいます。
尿酸を濃縮するのは、食べ物や水が不足したときに備えて、濃縮した尿酸を少しずつ使用しながら身体のバランスを保つことができるように進化の過程で定着してきた人体の仕組みです。
しかし食べ物や栄養分が豊富な現代では、尿酸は身体の中で余りがちになってしまいます。
尿酸が身体の中で増えすぎてしまうと、尿酸は身体の組織、特に関節の部分で「尿酸ナトリウム」という針のような形の結晶になります。
問題はこの「尿酸ナトリウム」の結晶です。
この結晶が大きくなりすぎると結晶は関節からはがれ落ちます。
この剥がれ落ちた結晶は、周囲のタンパクと結合して周囲の組織を刺激すると、炎症の原因となる物質が生まれます。
さらに血小板などにも作用し、セロトニンなどを作らせて炎症を悪化させます。
それだけでなく、身体の中の白血球はこの結晶を身体に有害なものだと判断して、一斉に攻撃を始めます。
この攻撃が始まると白血球は血管の拡張作用のある物質などを放出、消化酵素などを用いて結晶を食べてしまおうとするのですが、この酵素が関節の中に広がるとさらに炎症が起きてしまいます。
また、この結晶はウイルスなどとは異なり生物ではないため、白血球は最終的には自滅してしまいます。
その結果、白血球の活動により尿酸が発生、さらに尿酸値が高くなり結晶ができやすくなるという悪循環が起きてしまいます。
つまり、痛風の激痛の原因は、身体の中で複数の原因で起きている炎症ということになります。
この炎症が起きやすいのは身体の末端です。
その理由は、尿酸が結晶化した尿酸ナトリウムは身体の末端で発生しやすいという性質があるからです。
特に痛風が起きやすいのは足の親指ですが、尿酸ナトリウムは比較的比重が重く、どうしても身体の端に集まりやすいのです。
さらに足の先は体温が低く、親指は関節が大きいため尿酸ナトリウムが溜まりやすい場所です。
ただし、痛風は足の親指だけでなく、ひざやひじ、手首、指、耳などでも発症することがあります。
痛風の発作による痛みはピークを過ぎると少しずつ消えてしまうものですが、残念ながら一度痛風の発作が起きてしまった場合には、飲酒や脱水、疲労、ストレスなどをきっかけに、炎症を置きやすい状況が発生、その後何度も痛風の発作に襲われるということになってしまいます。
3.なぜプリン体が悪者に?
痛風の激痛の原因は、たまりすぎた尿酸と、それが結晶化した尿酸ナトリウム、そして尿酸ナトリウムを攻撃する白血球ということが分かりました。
それでは、なぜプリン体が痛風の原因のように言われているのでしょうか。
プリン体が悪者と言われるようになった理由はなんなのでしょう?
3-1.プリン体とは?
プリン体とは、「プリン骨格」という構造を持っている物質の総称です。
これは様々な物質に含まれていて、プリン塩基、プリンヌクレオチド、核酸などに含まれています。
特にDNAには多く含まれていて、生命維持には欠かせない存在です。
また、DNAは食べ物をエネルギーに変える代謝を司りますが、その時に作られるアデノシン三リン酸は細胞のエネルギーの基本的な単位となり、「細胞のエネルギー通貨」とも呼ばれているほど大切なものです。
つまり、プリン体が存在しなければ人間は動くことだけでなく、食べたものをエネルギーに変えることができなくなってしまいます。
しかし、問題はプリン体が分解されたときです。
口から入ったプリン体は肝臓で代謝されますが、そのときに発生するのが、あの「尿酸」です。
そのため、「プリン体」イコール「尿酸」、「尿酸」イコール「痛風」というイメージが定着してしまい、痛風を予防するためにはプリン体を控えることが最善だと考えられるようになっています。
3-2.プリン体を多く含む食べ物とは?
100グラム当たりの含有量では、非常に多いのは魚介類です。
大正エビが約273ミリグラム、カツオが約211ミリグラム、スルメイカが約186ミリグラムなどとなっていて、特に多いのがアンコウの肝の約399ミリグラム。
「あん肝」は酒の肴の定番ともなっていて、痛風に気を付けている人は避けていることが多い食品の代表です。
また肉類ではレバーをはじめとするホルモン類に多く含まれている他、豚肉や牛肉、鶏肉にもかなり多くのプリン体が含まれています。
また、ビールにもプリン体が多く含まれていて、その半面、野菜に含まれているのはごく少量で、そのためこれらの食品を食べている人には痛風が多いと考えられ、「痛風はぜいたく病」などと言われた時代もありました。
しかし、実はプリン体が痛風の原因と考えられていたのは、かなり昔の話です。
現在では、食べ物から体内に入ったプリン体は、分解されると尿酸に変わらず、ほとんどが体外に排出されるということが明らかになっています。
3-3.プリン体が生成される場所とは?
人間の身体の中に占めるプリン体のうち、食べ物に由来するものはわずか2割。
それでは、生命の維持に必要なプリン体の残りの8割はどこから生まれるのでしょうか。
答えは「肝臓」。
つまり身体の中にあるプリン体のほとんどは、人体の中で製造されているのです。
そのため、現在では痛風の予防・治療では食べ物に由来するプリン体はそれほど気にする必要はないというのが常識となっています。
といっても、だからといって肉や魚などを暴飲暴食することは決しておすすめはできませんが、しかしプリン体が痛風の最大の原因ではないとするなら、何が尿酸値を上げて、尿酸が尿酸ナトリウムの結晶化の原因となっているのでしょうか。
4.痛風の原因
4-1.アルコール
現在、痛風の大きな原因と言われているのが「アルコール」です。
(関連記事→急に激痛!20〜30代の男性に急増している痛風の7つの原因!)
アルコールが体内に入ると、身体はアルコールを分解、対外に排出しようとします。
アルコールを分解する場所といえば肝臓ですが、肝臓がアルコールを分解しようとするとき、同時に生まれる物質があります。
それが尿酸で、アルコールを分解するために大量に使われるのが体内のプリン体です。
プリン体はアルコールとともに分解されて、病さんに変わってしまいます。
同時にアルコールを分解するときには、もう一つの物質が生成されます。
それが乳酸です。
筋トレなどを行っている人にはおなじみの物質かもしれませんが、実はこの乳酸は筋肉を疲労させるだけではありません。
乳酸には痛風に関わる重要な作用があり、これが「尿中尿酸排泄阻害作用」と呼ばれるものです。
つまり、尿によって尿酸が排泄されるのが阻害されてしまい、体内には次々と生み出される尿酸が溜まりにたまっていくのです。
お酒を飲むとトイレが近くなりますが、実は排出されているのは水分だけなのです。
尿酸は身体の中に残ったままで、さらに水分が不足することで尿酸は濃縮、短い時間で結晶化が進んでしまいます。
アルコールを大量に飲んだあと、痛風発作が起きるのはこれが原因ではないかと言われています。
それでは「痛風予防のためにビールをプリン体ゼロのものに切り替えた」という人の場合はどうでしょう。
実はこの行為は、あまり意味がありません。
それどころか、さらに痛風の危険を促進する可能性もあります。
というのも、アルコールを飲んで生まれるプリン体は、元々アルコールに含まれているものではなく、アルコールを分解して体内で生成されたものだからです。
つまり、飲んだアルコールにどれだけプリン体が含まれていても、さほど関係がないのです。
また、通常のものであっても、プリン体ゼロのものであっても、問題となるのはその量。
もしビールを大量に飲んでしまった場合、利尿作用によって尿酸値が急上昇する可能性もあります。
しかもプリン体ゼロのものを飲んでいる場合、プリン体ゼロだから安心と、普通のビールよりも大量に飲んでしまう可能性もあるのです。
また、ビールよりも焼酎のほうが安全と信じている人も少なくありませんが、それがアルコールである以上は同じことです。
確かに焼酎の場合、含まれるプリン体はゼロ。
一般的なビールの場合には5.0ミリグラムのプリン体が含まれているため、一見、焼酎のほうが痛風になりにくいと思われるかもしれません。
しかしアルコールを飲んだ場合には、それがどのような種類のものであれ肝臓でプリン体が生成されてしまうため、ビールであれ焼酎であれ痛風のリスクが高まるという点では、ほとんど変わりがありません。
ただし、アルコールを摂取した場合には、口から入るプリン体が吸収されやすくなるという研究もあります。
そのため、焼酎やプリン体オフのビールのほうが、多少はましと言えるかもしれませんが、どちらにしろ重要なのはどれだけのアルコールを飲んだかという点です。
ビールであれば500ミリリットル、焼酎ならお湯割り一杯程度と言われています。
そのため、お酒を飲む場合には全体の量に注意が必要です。
ちなみに、お酒の中ではビールが多くのプリン体を含むことで知られていますが、意外なことに紹興酒も非常に多くのプリン体を含んでいます。
その量はビールの約2倍もあります。
そのため痛風の危険を避けるなら、焼酎やウイスキー、ワインなどを選ぶと比較的リスクを避けることができるかもしれません。
4-2.肥満
痛風を発症する原因のひとつに「肥満」が挙げられます。
痛風はぜいたく病といわれていた頃から、太りすぎの人に痛風が発症することも多く、現在でも痛風患者の治療の一つにカロリー制限が行われることもあります。
(関連記事→痛風を改善するために!食事で気をつける7つのポイント!)
それではなぜ肥満になると痛風のリスクが高まるのでしょうか。
大きく関係しているのは、「インスリン」と「アディポネクチン」です。
「インスリン」はすい臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。
食事によって血糖値が上がると、インスリンが分泌、その働きで身体が糖質を取り込んでエネルギーとして活用します。
しかしこのインスリンにもやっかいなところがあり、それが「体内の尿酸の排泄を阻害する」という点です。
身体のバランスが整っている状態なら問題はありませんが、肥満になると体内のインスリンが余り気味になり、その結果、尿酸値の高い状態が続いてしまいます。
一方の「アディポネクチン」は脂肪細胞から分泌される物質で、内臓脂肪の燃焼を助ける働きを持っています。
動脈硬化などを予防する効果もあると言われ、「長生きホルモン」などと呼ばれることもありますが、脂肪細胞が大きくなりすぎると、脂肪細胞はアディポネクチンを分泌できなくなってしまいます。
アディポネクチンが減ると内臓脂肪の燃焼ができなくなりさらに太りやすくなるだけでなく、尿酸の排出にも影響があり、体内の尿酸値が上昇、痛風のリスクが高まってしまいます。
以上のように、肥満は「インスリン」と「アディポネクチン」の不足を招き、痛風発作の大きな原因となるのです。
まとめ
プリン体だけに気を付けていたのでは決して防げない痛風。
ここで挙げた以外にも、ストレスや不規則な生活なども痛風が発症する大きな原因となる可能性もあります。
(関連記事→本当に痛風?痛風の検査と治療法とは?)
不安のある人は、専門医に相談してみてはいかがでしょうか。
T.Ttally
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