眠っているときの「いびき」はやっかいなもの。
「パートナーのいびきがうるさくて眠れない」「自分のいびきがうるさくて起きてしまった」という人もいるのではないでしょうか。
しかし、実はいびきの背後には恐ろしい病気が隠れている可能性もあります。
今回はいびきのメカニズムや、いびきがサインとなる病気、いびき対策などをご紹介します。
1.「いびき」とは?
いびきをかく人には、毎日必ずという人や、疲れているときだけなど、様々なタイプがいます。
また、音の大きさや時間なども人それぞれ。
それでは、そもそもいびきとはどういうものなのでしょうか。
いびきは、簡単に言えば睡眠中の粘膜の振動です。
人間は呼吸するときには、上気道という場所から空気を取り入れますが、この上気道が狭くなると粘膜が振動、それが口の中で増幅され、いびきとなります。
この上気道が狭くなることには様々な原因があります。
睡眠中、人間の身体は弛緩していますが、それはのどの周囲の筋肉も同様です。
さらに横になることで、舌が下がって上気道を狭くします。
加えて、太り気味の人の場合、首回りに付いた脂肪が喉を圧迫、上気道を狭めてしまうことで大きないびきにつながります。
また、お酒もいびきの原因になります。
お酒を飲んでいるとき、アルコールは肝臓で分解されますが、そのときに同時に大量の水分が発生します。
さらにお酒を飲んでいるときには、おつまみとして塩分を取りがちですが、塩分が過多になると、浸透圧の関係で身体はさらに水分を貯めこみます。
それがお酒を飲んだときのむくみの正体ですが、このむくみは舌にも発生、普段より大きく、重くなった舌が上気道を狭め、いびきにつながります。
これ以外にも、口呼吸もいびきの原因になります。
口呼吸は鼻呼吸に比べて軟口蓋が落ち込みやすくなりますが、その際、空気抵抗が大きくなります。
風邪や花粉症などで鼻が詰まっている場合、いびきが大きくなるというのはこのためです。
これ以外にも、鼻の骨が曲がっていたり、下あごが小さい、口蓋垂が長いといった身体的な特徴でも、いびきは起こりやすくなります。
これら体型や飲酒、鼻づまりなどの原因のいびきは「単純性いびき」と呼ばれています。
この単純性のいびきの場合、原因を取り除けばいびきは解消します。
2.いびきがサインとなる病とは?
単純性いびきの場合、原因がはっきりしているため、それほど心配は必要ありません。
しかし、いびきは重大な病気のサインとなっていることがあります。
その代表的なものが「睡眠時無呼吸症候群」です。
この睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。
この睡眠時無呼吸症候群には「閉そく性」「中枢性」というふたつのタイプがあります。
「閉そく性睡眠時無呼吸症候群」は、睡眠中に上気道が何かの原因によって塞がれて息ができなくなる状態です。
呼吸はしようと努力はしているものの、何かに塞がれているため呼吸ができないという状態です。
一方の「中枢性睡眠時無呼吸症候群」はそもそも脳から「呼吸をしろ」という信号が出ていない、出ていたとしてもそれが伝達されていない状態です。
こちらはそもそも呼吸をしていない、完全に無呼吸になることが特徴です。
一説によると、日本での患者数は200万人から300万人といわれ、さらに病院に通っていない、正確な診断を受けていない潜在的な患者を含めれば、実際はさらに多いと言われています。
そして「閉そく性睡眠時無呼吸症候群」では、いびきが大きなサインとなります。
3.閉そく性睡眠時無呼吸症候群」が起きる仕組み
多くの人は眠るときには仰向けの姿勢を取っています。
中には横向きやうつ伏せで眠りにつくという人もいますが、健康な人の場合、一晩に20回以上の寝返りをうつと言われていることから、自分で気が付いていなくても夜中に仰向けの姿勢になっていることは少なくありません。
そして「閉そく性睡眠時無呼吸症候群」が起きるのは、この仰向けの状態です。
すでに述べたように、睡眠中は全身が弛緩しています。
仰向けに寝ているときには舌ものどの奥のほうに落ち込みますが、通常であれば、舌で気道が塞がれてしまうことはありません。
しかし、舌の周囲に脂肪がついていたり、そもそも気道が細いという場合、舌が沈下することで完全に気道が塞がれてしまいます。
さらに舌だけではなく、喉にも脂肪がついている場合には、さらに閉そくを起こす可能性は高くなります。
さらにアジア人の場合、欧米の人に比べると身体的にあごが細い人が多いため、さらに気道が塞がるリスクは高くなります。
「閉そく性睡眠時無呼吸症候群」のサインとなるのが、大きないびき。
のどの奥が閉そくしている場合でも、人間は何とかして呼吸を行おうとします。
そのとき、強い圧力がのどの粘膜にかかるため、通常よりもはるかに大きな音のいびきとなります。
4.無呼吸症候群になるとどうなる?
無呼吸症候群とは、簡単に言えば呼吸ができなくなる状態です。
人間の身体は酸素がなくては活動を行うことができません。
呼吸ができなくなった場合、人間の身体は心拍数を上げて、残った酸素を身体に供給します。
これは言い換えれば、激しい運動をしている状態です。
さらに呼吸が止まるたび、脳は一瞬覚醒するため、そのたびに睡眠も途切れることになります。
本来はゆっくり休んでいるはずの睡眠中に、何度も目覚めて激しい運動を繰り返しているという状態になっているということは、身体にも大きな負担がかかります。
そのため、しっかり寝ているはずなのに、眠気を感じる、疲れが取れない、集中力が続かないといった症状が現れるのが睡眠時無呼吸症候群の特徴です。
さらに、症状が進むと、より深刻な状態になるのも睡眠時無呼吸症候群という病気の恐ろしいところです。
その代表的なものが高血圧です。
睡眠時無呼吸症候群の患者のうち約半数が高血圧だと言われ、高血圧の患者の3割も閉そく性睡眠時無呼吸症候群の可能性があると言われています。
さらに閉そく性睡眠時無呼吸症候群は心臓にも大きな負担を与えます。
そのため心不全や不整脈、狭心症などといったリスクも高くなり、最悪の場合には突然死を引き起こすこともあります。
(おすすめ記事→意外と知らない!生活習慣病の患者数と年間死亡者数、年間医療費とは!?)
5.睡眠時無呼吸症候群の治療法とは
閉そく性睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、すぐにでも治療を開始する必要があります。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、肥満が原因となっている場合、まず必要となるのがダイエットです。
閉そく性睡眠時無呼吸症候群の場合、舌やのどの周りの脂肪が原因となっているケースも多く、その場合はダイエットを行うことで多くの改善が見られます。
しかし、注意したいのは太っていなくても閉そく性睡眠時無呼吸症候群を発症することがあるということ。
先ほど述べたように、閉そく性睡眠時無呼吸症候群は太りすぎだけでなく、あごが小さいなど、体型的な問題によって発症する場合があります。
その場合は、専用のマウスピースを作り、睡眠時に装着することであごの位置を整え、気道を確保します。
また、気道に圧力を加えるマスクを着用する、手術によって気道を確保するという方法もあります。
家庭でできる対処としては、寝具を見直すという方法があります。
閉そく性睡眠時無呼吸症候群は、舌が沈下して気道を塞いでしまうことが原因ですが、この場合、仰向けで就寝していることがほとんどです。
そのため、横向きに眠ることで、舌の沈下を防ぐことができます。
専用のマットレスなども販売されていますが、手軽に対処したいと言う場合、抱き枕などを使用するのもおすすめです。
そのほか、タバコを吸っている場合には、禁煙することも必要です。
タバコを日常的に吸っていると、気道に炎症が発生、それが慢性化すると、気道はその損傷を修復するため、少しずつ気道の壁が分厚くしていきます。
気道の壁が厚くなると、どうしても気道が狭くなり、その結果、閉そくが起きやすくなります。
そのため、もし閉そく性睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、早急に禁煙することが求められます。
6.いびきが教えてくれる睡眠時無呼吸症候群以外の病
眠っているときに大きないびきをかいている場合、睡眠時無呼吸症候群以外の病気のサインであることもあります。
まず疑われるのが「扁桃腺肥大」です。
扁桃腺肥大とは、何らかの原因で扁桃腺が大きくなってしまう症状です。
扁桃腺は舌の付け根の両側にあるふくらみで、体内に侵入するウイルスに対して身体を守る役割を持っています。
通常、扁桃腺の成長は6歳ごろに止まり、成長とともに小さくなりますが、ごくまれに成長が止まらず、大きくなり続けるということがあります。
これが扁桃腺肥大です。
扁桃腺が肥大すると、太りすぎと同様に仰向けになったときに気道を圧迫、息ができなくなってしまうこともあります。
(おすすめ記事→扁桃腺が腫れるのは風邪だけでない!知っておきたい病気と扁桃腺の腫れ対策5個)
また、日常的に息がしづらいため、口呼吸になりやすいです。
口呼吸は単純に口で呼吸するだけと思いがちですが、実は様々なリスクが潜んでいます。
たとえば、口だけで呼吸しておくと、空気中の細菌や異物が体内に侵入しやすくなります。
通常は口の中は外部からのウイルス感染を防ぐため、唾液などが分泌されていますが、口呼吸を繰り返していくと口腔内は乾燥、ウイルス感染を防止するために必要な唾液が乾燥してしまいます。
そうなると、人間の身体は簡単にウイルス感染を許してしまいます。
さらに口呼吸のリスクはそれだけではありません。
口呼吸による唾液の減少は歯周病の原因にもなります。
通常、人間は物を食べたあとに唾液を分泌、細菌などを洗い流し、歯の健康を保ちますが、やはり乾燥によって唾液がなくなってしまうと、細菌が繁殖、虫歯が増えるだけでなく、口臭の原因にもなってしまいます。
その他にもいびきの原因には、鼻の中心にある鼻中隔が曲がっている「鼻中隔湾曲症」や、慢性化したアレルギー鼻炎である「肥厚性鼻炎」、鼻の炎症で粘膜がポリープになってしまった「鼻茸症」などが原因となっていることがあります。
7.どうすればいびきは防げる?
特に病気が原因ではない場合でも、やはりいびきはかかないに越したことはありません。
それでは、どうすればいびきをかかないようにできるのでしょうか。
7-1.ダイエット
いびきの大きな原因は、やはり肥満です。
肥満の人がいびきをかく場合、現在は閉そく性睡眠時無呼吸症候群ではなかったとしても、将来的にそうなる可能性が高いため早急にダイエットに取り組みましょう。
(人気記事→ウォーキングで仕事の効率UP!?ウォーキングダイエットの魅力とは?)
7-2.枕を替える
いびきを何とかした場合、枕を替えるというのも効果的な方法です。
いびきを防ぐためには横向きで眠ることも重要ですが、横向きに眠るのに適した枕も販売されています。
また、仰向けで眠る場合にも、枕の角度によって上気道が圧迫され、狭くなっていることも考えられます。
枕は様々な種類のものがあり、また首の角度なども個人差があるため、専門店に行って相談してみるとよいでしょう。
7-3.鼻呼吸を促す
いびきの原因となるのは口呼吸です。
そのため、鼻呼吸を促進させるグッズを使用すると言う方法もあります。
たとえば、鼻に反発力のあるプラスチックバーを張り付けることで鼻呼吸をサポートするグッズの場合は、リーズナブルで違和感も少ないため、手軽な対策としておすすめです。
同時に、口呼吸を防止するために、唇に張り付けるマウステープなども販売されているため、自分が使い心地のいいものを選ぶとよいでしょう。
ただし、あまり神経質になりすぎると不眠の原因となるため注意しましょう。
7-4.アプリを利用する
なかなか自分では気づきにくいのがいびきですが、睡眠中のいびきを録音、状態を分析するアプリも登場しています。
特に一人暮らしの場合には、自分のいびきはわからないものなので、こういったものを利用するのもいい方法です。
7-5.病院を受診
いびきがひどいと言う場合には、病院を受診するという方法もあります。
その際は耳鼻科だけでなく、いびきや睡眠など、専門に治療を行っている医院を選ぶとよいでしょう。
まとめ
ついつい軽視してしまうこともあるいびきですが、深刻な病気のサインになることもあります。
なんとなく身体が不調という場合、いびきに注目してみると原因がはっきりするかもしれません。
T.Ttally
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