プレッシャーやストレスを感じている時に、心地良い音楽が流れると「気持ちが安らぐ」と感じる人は多くいます。
実際に音楽が持つ癒しの効果は現代科学で裏付けられており、医療や福祉、教育など幅広く用いられています。
ここでは、音楽が疲れを和らげて元気を回復させる理由や効果を詳しくご紹介しましょう。
1.癒し音楽の歴史
健康状態を回復させる音や音楽。
この考え方は中世やルネッサンス期の学者や作曲家、医師たちの間でもみられていました。
例えば、エリザベス1世の時代は叙情詩や声楽曲で有名なトマス・カンピアン医師が、うつ病など心の病気を歌を使って治療しました。
ジェイムズ1世の時代にもトーマス・コーガンやリチャード・ブラウンが音楽で患者を治療したといわれています。
18世紀の有名なオペラ歌手ファリネッリは、長年病気で苦しんでいたスペイン国王フィリップ5世に、王が好んでいたマリアを繰り返し歌って病気を治しました。
そして19世紀になり、科学的に研究されるようになった生理的効果。
音楽が呼吸や心拍数、血液の循環や血圧に与える影響を測定することができるようになりました。
特に、心理的リハビリテーションや精神衛生、作業療法の分野で認められるようになり、特定の痛みを軽減することも報告されています。
2.音楽による癒しのメカニズム
2-1.細胞に与える影響
音や音楽に癒しの効果があるといえる理由の一つは「共鳴」という原理です。
基本的に、音は振動することで生じます。
体の組織は水分を多く含んでいるため、音波が身体に入ると細胞の中で共鳴が起きて組織の健康が回復し強化されます。
実際に、科学的な研究によって裏付けられています。
音楽セラピストや生物学者の間でも、音のバイブレーションが生きた細胞に影響を与えるという報告があります。
音の共鳴によって健康な細胞や組織を強化され、がん細胞など有害な細胞の働きは阻害されたという現象がみられました。
2-2.脳に与える影響
音楽を聴くことと脳の仕組みは深く関係しています。
人間の脳は大まかに分けて3つに分類できます。
① 自律神経系……体内のあらゆる機能を調節し、快適に生活できるよう働いています。
② 大脳辺縁系……好き嫌いや、喜びや不安、愛情や感動などの感情と関係しています。
③ 大脳新皮質……知性や想像力を働かせる時に使われます。
これら三つの部分が互いに影響し合って働きます。
興味深いことに、自律神経系が最も良く働く時は大脳辺縁系から自律神経系にポジティブな感情を受け取った時といわれています。
つまり、「楽しい」「嬉しい」「気持ち良い」といった感情が体や行動に影響するといわけです。
3.癒しの音楽の効果とは?
ミュージックセラピーとも呼ばれる音楽療法。
ストレスや疲労、痛みやうつ症状なども解消して、心と体を癒すために専門家の音楽セラピストが行います。
海外では認知度も高く国家資格になっているほど。
しかしながら、「癒しの音楽」を聴いているだけでもさまざまな効果があります。
3-1.リラックスして心が休まる
癒しの音楽を聴くと自律神経の系のバランスが良くなるため、体の基本的なリズムが整います。
特に、30〜40代は働きすぎや夜型生活、精神的プレッシャーを抱えることが多く、体のリズムが崩れやすくなることも。
ストレスがたまると交感神経が優位になり、神経が興奮してバランスが狂ってしまいます。
音楽で癒されるとリラックスモードに入って副交感神経が優位になるため、心が休まるのを感じるでしょう。
(人気記事→アロマキャンドルは癒し効果大!香りと炎のゆらぎでリラックス)
3-2.免疫力が高まり快調になる
自律神経は体の恒常性を司っていますので、そのバランスが良い状態が続くと本来持っている体の身体機能もスムーズに働きます。
自律神経系に働いて血流やホルモンの変化など体内で化学反応が起きると、毛細血管が開いて血行が良くなって皮膚の表面の温度も高くなるでしょう。
ストレス系のホルモンが出ているときとは対照的に、気持ちが高揚して体も快調に。
β-エンドルフィンの分泌は免疫力を一番高めてくれるという働きあもります。
その結果、新陳代謝が活発になって、皮膚もつややかになり、若々しくはつらつとした印象になるでしょう。
3-3.知性を伸ばすことができる
癒しの音楽を聴いて気持ち良くなると、大脳辺縁系から「快」が自律神経系に伝わって、ドーパミンやβ-エンドルフィンが分泌されます。
これは快楽ホルモンと呼ばれ、大脳新皮質を活性化する働きがあります。
自分の好きな癒しの音楽を聴きながら、いろいろな場面を想像して思い描くと、希望や夢、不安や心配などさまざまな感情が起きるでしょう。
その状態のもとで考えたり、想像したりすると知性を伸ばすことができます。
3-4.意欲が出る
仕事やプライベートでやりたいことを実現するためには、目標設定や行動計画が重要です。
しかし、精神的なストレスや体調の崩れ、気分の落ち込みがあるときはネガティヴ思考に。
癒しの音楽で自分の中のモチベーションや想像力を高めると、楽しい作業として行うことができるでしょう。
いい思いつきや、いい考え、新たな意欲がどんどん生まれることもあります。
4.癒しの音楽を選ぶときのポイントとは?
4-1.「自然の音」が使われている音楽
音をセラピーに使う場合、音の用途を決定する大きな要素となるのが周波数。
一般にヘルツ(㎐)と呼ばれますが、人間が心地良く聞こえる音は2000㎐以下の低い周波数の音です。
例えば、鳥のさえずりや川のせせらぎ、虫の羽音や葉ずれ、草が風になびく音など。
癒しの音楽に使われることが多いでしょう。
特に小鳥の歌はホリスティック・セラピー(全体論的療法)として認められ、ストレス解消の効果が高いことが証明されています。
興味深いことに、赤ちゃんの笑い声もこの音域内といわれています。
「赤ちゃんを見ていると癒される」と感じる人も多いですが、周囲にいる人が自然に笑顔になれるのは心地良さを感じているのも理由の一つでしょう。
4-2.クラシック音楽
癒しの音楽の代表クラシック。
リラックスして精神を安定させるα波を誘発するため、自然と気持ちも穏やかになります。
特に、癒しの効果が優れているのはモーツァルトの曲です。
聴こえてくる高周波音は体に良い影響があることが分かっています。
体の免疫力を高めたり、脳を活発にしたりして脳内ホルモンの分泌を促してくれるでしょう。
時代を経て愛され続けたクラシックの種類は豊富です。
好みやその時の気分は人それぞれですから、聴いていて「心地良い」と感じるものがおすすめです。
5.癒しの音楽を聴く時のポイントとは?
5-1.落ち着ける場所を選んで低音で聴く
気持ちが沈んでいたり、思うように行動できないと感じる時。
自分の落ち着ける部屋や場所を選んで、好きな音楽を適度なボリュームで流してみてください。
心の状態がずいぶん変わってくるのを感じます。
自然と表情も穏やかになり自然にほほえむことも。
内面からのほほえみもセラピー効果の一つです。
工事現場の音や交通量が多い道路の音などの騒音は人をイライラさせたり集中力を低下させたりします。
普段、仕事や日常生活で騒音を耳にすることが多い人は、癒しの音楽が一層心地良く感じることがあるでしょう。
避けたいのはスピーカーの近くで聴く大音量の低音です。
音の大きさは空気の振動の大きさに比例するため、耳が痛くなってしまいます。
5-2.眠る前はタイマーをセットする
人間の脳に耳から入ってくる音を選別する能力があるため、考え事に本当に集中すると音は聞こえなくなるともいわれています。
しかし、音楽のリズムや振動はきちんと耳に伝わっているため、音楽の効果は同じようにあります。
実際、音楽療法の専門家によると、耳が遠い人でもヘッドホンをつけて適切な音楽を聴かせると、それなりの効果がきちんとみられたと報告されています。
特に眠る前に聴く音楽は、ゆったりとした心の落ち着く音楽を低めにかけるのがおすすめ。
気持ち良さが全身を包むように感じ、眠りに入る最適な状態になります。
そのまま眠っても大丈夫なように、タイマーをセットして自然にオフしましょう。
(おすすめ記事→体が楽になる!疲れをとるマッサージのコツとは?)
【参考文献】
「サウンドヒーリング」/オリヴィア・デューハースト・マドック 著/産調出版 株式会社
「音響免疫療法」/西堀貞夫 著/株式会社 幻冬舎
「脳にうれしい音楽のチカラ」/佐藤富雄 著/株式会社 ショパン
まとめ
人間が最も敏感に感じ取る周波数域は2000〜5000㎐の音。
不快に感じるのはこの音域のノイズ(雑音)です。
人によって音の感じ方は異なりますが、「物と物をすり合わせた時に生じる高い音」は誰もが聞きたくない音といわれています。
例えば、爪で黒板を引っ掻いた時や発泡スチロールなどが擦れた時の音。
音は人の心の状態を変える作用があります。
BGMで親しむのも良いでしょう。
忙しい人ほど、日常生活に癒しの音楽を取り入れてみてください。
HANA
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