スポーツにおいて呼吸と筋力と瞬発力は、密接な関係があると言われています。
実際、呼吸による腹筋トレーニングには筋力増強の効果があり、腹直筋の筋力を増強することができるのです。
意識して呼吸方法を変えるだけで、徐々に腹部が引き締まってくるでしょう。
ここでは、トレーニング方法のコツをご紹介します。
1.呼吸によって腹筋を鍛えることができる理由とは?
呼吸に関わる筋肉は骨格筋と呼ばれ、自分の意思で伸展や収縮をコントロールすることができます。
腹部の助間筋や横隔膜などの呼吸筋は骨格筋の一種です。
それで、他の骨格筋と同じようにトレーニングをすると鍛えられていきます。
ポイントは息を吐き出すことでより強く鍛えられていくという点です。
呼吸運動をしている時の呼吸の回数や換気量は、トレーニングでコントロールすることができます。
さらに、ある限界まで呼吸筋を鍛えるなら、呼吸数を少なくして、一回の換気量を増やすことができるのです。
2.腹筋を鍛えるために腹式呼吸が効果的な理由とは?
呼吸には普段無意識に行なっている胸式呼吸と、意識して行う腹式呼吸がありますが、腹筋が関係しているのは腹式呼吸です。
腹式呼吸をすると、腹部にある分厚い帯状の筋肉からなる横隔膜の上下運動が行われます。
安静時にはほとんど使っていなかった横隔膜を上下運動させることになりますので、胸式呼吸と腹式呼吸では呼吸にともなう筋肉の運動量にも差が出てくるのです。
通常、胸式呼吸をすると、主に内・外助間筋が動いて、胸骨や助骨といった骨組みが上下します。
しかしながら、腹式呼吸をすると、内・外助間筋の動きに横隔膜の大きな動きも加わるため、筋肉トレーニングの効果も高くなるといえるでしょう。
また、胸式呼吸と腹式呼吸の異なる点として、空気を吸う時間と吐く時間の割合があります。
毎日何気なく行なっている胸式呼吸ですが、吸うことと吐くことの割合は2:1〜1:1。
腹式呼吸はというと1:5の割合になっています。
つまり、腹式呼吸の方が吐く時間が長くなっているのです。
より多く吐いて、より長く吐き続けると、呼吸にともなう筋肉の運動量を上げることができるでしょう。
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3.呼吸で行う吸気筋を鍛えるトレーニング方法とは?
最も行いやすいのは、息を精一杯吸い込んだ後、約6〜8秒間にわたり吐き続けるという方法です。
イメージとしては、腕の筋肉を鍛える時など、ダンベルを持ってゆっくり腕を曲げ伸ばしするといった感じに似ているでしょう。
おさえておきたい点ですが、筋力トレーニングの効果を出すコツは、負荷をかけた状態で筋肉をゆっくりと最大限に伸ばして、その後縮めることです。
それで、主な吸気筋である外助間筋を鍛える場合も、同じように負荷をかけて最大限に伸縮させましょう。
4.呼吸で行う呼気筋を鍛えるトレーニング方法とは?
最も行いやすいのは、8〜16秒かけてゆっくり息を吐くという方法です。
コツは少しずつ長く吐くことです。
息を吐く時、口をすぼめることもできます。
息の流出口が小さくなって、流出量が減っていき、吐き出す時に抵抗がかかるため、長い時間をかけてゆっくり吐き出すことができるでしょう。
また、呼気筋を鍛えるトレーニングは、行なっていくうちに改善されていることをあらわすサインがあります。
① 呼吸数が減少する。
② 1分間あたりに吐く息の量が増加する。
③ 一回あたりの息を吸う量が増加する。
これらは、わずかな酸素量で多くのエネルギーを生み出すという効率の高まりを示しています。
摂りこまれた酸素が体のすみずみに届いているという目安にもなるでしょう。
5.腹筋を鍛える具体的な腹式呼吸の方法とは?
お腹の凹凸運動が強調される腹式呼吸。
胸腔の容積を上下に調節することになり、胸腔圧が変わります。
具体的な方法を5つあげてみました。
5-1.仰向けで行う方法とは?
仰向けで行うメリットは、全身がリラックスすることや横隔膜の上下運動がかかりやすくなることです。
特に、夜寝る前に行うと寝つきが良くなります。
なるべく、枕などで頭を少し低めにして、足は少し高めに持ち上げておきましょう。
① 全身の力を抜いて筋肉を弛緩させ、仰向けに寝ます。
② へその少し上あたりにある横隔膜の上に手を置きます。
③ 鼻から一気に息を吸い込んで、腹筋を意識しつつお腹を膨らませます。
④ お腹から空気を絞り出すような感じで、口から少しずつゆっくり息を吐き出し続けます。
⑤ 約10秒かけて、十分に息を吐き切りましょう。
5-2.立って行う方法とは?
立って行うメリットは、両腕の上下運動を加えることで胸郭を囲む骨格が広がって、胸腔が広がることです。
より多くの空気を吸い込むことができますし、より長い時間吐き出し続けることができます。
また、タイミングもとりやすくなるでしょう。
① 気持ちを落ち着かせて、リラックスしましょう。
② 足は肩幅くらいに開いて立ち、背筋を伸ばします。
③ 両腕を下げて、膝を少し曲げる感じにします。
④ 深呼吸をする感じで両手をゆっくり上げながら、鼻からすばやく息を吸い込みます。
⑤ 今度は両腕をゆっくり下ろしながら、腹筋を意識しつつ、口から息を吐き続けます。
⑥ お腹から空気を絞り出すような感じで、10秒以上かけて吐ききりましょう。
⑦ 最後は両腕をお腹のあたりに置いて、体は前かがみの姿勢にします。
5-3.座って行う方法とは?
座って行うメリットは、椅子に腰かけますので、膝が痛い人でも呼吸で腹筋を鍛えることができます。
また、息を口からゆっくり吐き出し始めると、自然に体が前に倒れる感じになります。
常にお腹を意識しながら、以下の方法を5回くらい繰り返しましょう。
① 椅子に座って背筋を伸ばし、両腕を体側に置きます。
② 全身の力、特に肩の力を抜いて、自然に頭が前の方へ垂れ下がる感じにします。
③ この姿勢から水をすくうように両腕を前方へ持ち上げて、上体を起こしながら、鼻から一気に息を吸います。この時、お腹が膨らんでくるでしょう。
④ 両腕をお腹の方に少しずつ下ろしながら、口からゆっくりと息を吐き出します。この時、口を小さくすぼめて、舌は顎につけます。そうすることで、空気の出口がより小さくなり吐き出す空気量は少なくなります。また、両手のひらでお腹の横隔膜あたりをおさえると良いでしょう。息を吐ききりやすくなります。
⑤ 腹筋を意識しながら、お腹から絞り出すような感じで、約10秒かけて息を十分吐ききりましょう。
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5-4.あぐら姿勢で行う方法とは?
あぐらで行う時はリラックスした姿勢をしましょう。
コツは、息を吸った時にはお腹が前方に突き出していること、息を吐いた時には腹部が引っ込むことを確認しながら呼吸することです。
深く息を吸い込んだ後、できるだけたくさんの息を吐き出すという動作を5回繰り返してください。
この時、お腹を凹ますことに意識を集中しましょう。
① あぐらをかいて、背筋を伸ばします。この時、片方の手はお腹の横隔膜のあたりにあて、もう一方の手は自然に脚の上に置きます。
② 下腹部に意識を集中させつつ、へそのあたりをゆるめないように意識しながら、軽く少しずつ息を吐き出し続けます。腹部にあてた手のひらでおさえると良いでしょう。
③ 心の中で10秒数えて最後まで吐ききります。
④ 腹部を前方に突き出しながら、自然に鼻から息をゆっくり吸い込みましょう。
5-5.水中で行う方法とは?
水中で行うメリットは、腹部に水圧がかかりやすくなって、自然に腹式呼吸ができてやりやすいことです。
他の方法とは異なり、意識して腹圧をかけたり、お腹を引っ込めたりするといった努力をしなくても良くなります。
実際に、横隔膜が上方に上がりやすく、息を吐き出しやすくなるでしょう。
① なるべく水中に深く立って、縁などにつかまりながら姿勢を維持します。
② 口を半開きの状態で、泡を出し続けていきます。この時、一気に息を吐き出すのではなく、少しずつ長く時間をかけて吐き出しましょう。
③ 60秒間ぐらい続けられれば大成功です。
【参考文献】
「呼吸の真髄 コツのコツ」/永田晟 著/発行所 株式会社講談社
「スポーツの科学」/スポーツインキュベーションシステム 著/発行所 株式会社ナツメ社
「トレーニングの科学」/松井秀治 著(代表)/発行所 株式会社大修館書店
まとめ
鼻で吸って、口で吐くという腹式呼吸による腹筋トレーニング。
コツをおさえて、スムーズな吐く息の呼吸法をマスターしましょう。
横隔膜のストレッチング運動と腹圧が強調され、筋力の増強効果を期待できます。
HANA
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