腸の異常を調べるとき、最も正確な情報を得ることができる方法が内視鏡による検査です。
がんや潰瘍の大きさ、数がすぐに分かるでしょう。
実際、早期がんの治療の第一選択肢と言われています。
内視鏡検査や内視鏡的治療について詳しくみてみましょう。
1.大腸内視鏡の構造とは?
大腸の内視鏡検査。
肛門から盲腸まで大腸の内部を観察する内視鏡はファイバースコープと呼ばれています。
内視鏡は細くてよく曲がる繊維を束ねた柔らかいチューブのような器具で、長さが約1.4mあります。
大腸は約2mですが、大腸をたたみながらスコープを挿入していくため、盲腸まで届いて大腸全体をみることができるでしょう。
盲腸までの全大腸をくまなく観察できる長いものだけでなく、S状結腸までを観察する短いものもあります。
また、内視鏡の先端には超小型のビデオカメラとライトがついています。
大腸の粘膜の状態をモニター画面に映し出して詳しくみることができます。
拡大内視鏡は大腸の表面構造を100倍まで拡大して観察することができます。
2.大腸内視鏡の検査方法とは?
患者は診察台に横になって、検査着を着たまま検査を受けます。
撮影した腸内がモニター画面に映し出されるため、自分の腸内をみることができるでしょう。
医師は直腸から内視鏡を挿入します。
モニター画面を見ながら病変部の有無や切除の判断などを患者に説明します。
腸内粘膜の微妙な色調の変化や非常に小さなポリープの発見、そのまま切除するかなどです。
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内視鏡の視野を100倍まで拡大できる拡大内視鏡。
腸粘膜の表面を染色して構造を詳しく観察しますので、正常な粘膜かがんかを判定できるでしょう。
検査時間は約30分。
熟練した医師が行うなら、痛みはほとんどありません。
ただし、苦痛が強い場合は医師に相談しましょう。
鎮痛薬などを使うこともできます。
3.内視鏡的治療ができるがんの条件とは?
内視鏡検査などで病気が確定した場合、切除などの内視鏡的治療に入ります。
良性ポリープや比較的軽症の早期がんは内視鏡に取りつけることができるワイヤーを使って発見と同時に切除することができます。
大腸癌治療ガイドラインでも内視鏡による切除が可能ながんの条件が載っています。
・大きさが2cm未満
・良性と判断したポリープ
・リンパ節転移の可能性がほとんどない粘膜内のがんや粘膜下層の浅い部分にとどまっているがん
ただし、切除したがんを病理検査した場合、結果次第で外科的切除が必要になることもあります。
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4.内視鏡超音波検査(EUS)とは?
内視鏡の先端に超音波を発する器具を取りつけたものを使います。
エコーとも呼ばれる超音波検査。
超音波を身体に当てて内臓から反射してくる情報を処理しモニターに画像化します。
大腸の壁は4層からなっています。
壁の表面から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜の順です。
内視鏡超音波検査はこれら4つの断面を超音波で描きだすことができます。
がんの診断で重要なのは深達度や浸潤度。
がん細胞が腸壁のどれくらいの深さまで達しているか、どのくらい奥まで広がっているかを判断することです。
内視鏡超音波検査によって、早期がんであると分かったなら身体への負担が少ない手術になるでしょう。
また、深達度や浸潤度、リンパ節転移や他の臓器への遠隔転移の有無などで進行がんと判断した場合、身体への負担がどの程度まで大丈夫かを考慮した手術を行うことになるでしょう。
特に、直腸がんの治療方針を決めるときに役立つ検査方法と言われています。
5.内視鏡的治療の代表的な3つの切除方法とは?
がんの形や大きさに応じて使い分けられる切除法。
内視鏡の先端の器具によってがんを切除します。
5-1.ポリペクトミー
良性のポリープや茎のあるポリープ型の早期がんが対象です。
内視鏡からスネアと呼ばれる金属の輪を出して、がんの根元に引っ掛けて締め付け、高周波の電流を流して焼き切ります。
切り取ったポリープを鉗子で取り出します。
治療の時間は短く、入院の必要はほとんどありません。
5-2.内視鏡的粘膜切除術(EMR)
デノボがんと呼ばれる約1〜1.5㎝の平坦な形のがんが対象です。
デノボとはラテン語で「初めから」という意味があり、粘膜から直接発生するがんのことです。
デノボがんは茎がないためスネアが引っ掛かりません。
そのため、内視鏡から注射針を出してがんの下の粘膜下層に生理食塩水などを注射して、茎のあるポリープ状に膨らませます。
盛り上がった部分にスネアを引っ掛けて締め付け、高周波の電流で焼き切ります。
切除後、出血や穿孔、取り残しがないかを拡大内視鏡で確認します。
取り残しがなければ、出血や穿孔の予防のため切除部分を金属クリップで閉じます。
切り取った病変の組織を標本にして病理検査します。
5-3.内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡的粘膜切除術(EMR)よりも広範囲のがんを一括で切除することができます。
再発の危険が少ない有効な方法と言えるでしょう。
内視鏡の先端から出る器具でがんの周辺に目印をつけて、がんの下の粘膜下層に生理食塩水などを注入して、がんとその周辺を持ち上げます。
ITナイフと呼ばれる専用のナイフでがんの周囲の粘膜を切開します。
これは、針状ナイフの先端に絶縁体が付いており、出血や穿孔を予防する工夫がされています。
さらに電気メスなどで粘膜下層を剥ぎ取り、切除した表面を止血します。
手術は全身麻酔のもとで行います。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は内視鏡的粘膜切除術(EMR)で安全に切除できる大きさ以上のがんを一度に切除できます。
技術の高い医師であるなら直径1㎝の病変でもまとめて摘出できると言われています。
ただし、大腸の壁は薄く穿孔や出血などの合併症を招く危険性が高くなるでしょう。
また、高度な技術と判断が必要なためESDを駆使できる医師は少なく、実施できる機関が限られています。
費用についても、保険は適用されず自己負担になります。
6.内視鏡的治療のメリットとは?
以前は早期がんでもお腹をメスで切り開く開腹手術が一般的でした。
これは、がんを臓器ごと切り取る外科手術です。
内視鏡手術はお腹を切らずに身体の内側からがんを切除するため、身体の負担が少なく回復も早いでしょう。
入院したとしても期間は短くてすみます。
また切除したがんの病理検査の結果、腫瘍が粘膜にとどまっている、粘膜下層への浸潤もない、切断面にもがんがないなど問題がなければ治療は完了です。
ほぼ100%治癒したとみることができるでしょう。
7.内視鏡的治療のデメリットとは?
内視鏡的治療は局所的な治療のため、取り残しや転移のリスクがゼロではありません。
リンパ管や血管が通っている粘膜下層。
粘膜下層に浸潤が及んでいるなど、大腸の壁の外のリンパ節転移の可能性があります。
手術前の検査の段階で、深い粘膜下層浸潤がある場合や転移していることが分かった場合は無理に内視鏡手術はしない方が良いでしょう。
腹腔鏡手術や開腹手術に切りかえて腸管切除を選ぶことになるでしょう。
また、内視鏡手術で切除した組織の辺縁までがん細胞が浸潤していて取り残しの可能性がある場合、転移の可能性が認められます。
腸管切除などの根治手術を追加しましょう。
もし根治手術を行わないなら、約10%の確率でリンパ節への再発が起こります。
見つけるのが難しいリンパ節の再発。
発見が遅れて治らないことが多いでしょう。
まとめ
大腸の内部の状態を詳しく映し出して、病変の一部を採取して調べたり、切り取ることができる内視鏡検査。
がんの進行度をみることができる内視鏡超音波検査もあります。
病期に応じて行われる大腸がんの治療は内視鏡的治療の他に手術療法、化学療法や放射線療法があるでしょう。
どの治療法を選択するかは主治医とよく相談することをオススメします。
HANA
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