腸の病気のひとつである大腸ポリープは約8割が放っておくとがん化してしまいます。
肉料理が好き、食べる量が多い、仕事のストレスが多いなどの傾向はありませんか?
悪化しやすく自覚しにくいのが腸の病気の特徴です。
大腸ポリープの特徴・症状・対処法をご紹介します。
1.大腸ポリープとは?
ポリープとはできもののことで、粘膜にできる突起物です。
よく知られているのはきのこ状に突起したものでしょう。
大腸ポリープには約10種類ほどタイプがあります。
例えば、10歳以下の子供に多く見られるのは若年性ポリープ、高齢者に見られるのは過形成性ポリープと呼ばれています。
形態はさまざまで、茎のあるキノコ状の有茎性や茎のない無茎性、両者の中間である亜有茎性などがあります。
大きさも約1㎜のものから数㎝のものまでいろいろあります。
一般的には良性のイボと呼ばれており、鼻や声帯、食道や胃など粘膜のあるところならどこにでもできます。
消化管の中では大腸が最も多く、特に大腸ポリープの約8割が集中するのは直腸とS状結腸、両方のうちどちらかというと結腸のポリープの方が目に見えて増えています。
2.良性と悪性の大腸ポリープとは?
ポリープができたからといって、必ずがんになるとは限りません。
大腸ポリープは極めて微小なものが大腸がんの数倍見つかりますし、寿命を迎えるポリープもあるからです。
ポリープの大きさや表面の模様などから、がん化する可能性のあるポリープか、がん化する可能性がほとんどないポリープかを区別し判断します。
そのため、すべてががん化するわけではなく、がんになる悪性ものとがんにならない良性のものがあります。
悪性は他の組織の中へ広がるつまり浸潤して転移していきます。
一方、良性は大きくなってもそこにとどまっています。
良性なら経過を見守ります。
そのまま切らなくても問題ないでしょう。
悪性なら切除することになります。
ポリープの性質や合併症の可能性を検査して対処します。
ほとんどの場合、すぐに切り取ることで完治するでしょう。
3.がんになる可能性がある大腸ポリープとは?
がんになる可能性があるのは腺腫性のポリープです。
(おすすめ記事→意外と知らない!生活習慣病の患者数と年間死亡者数、年間医療費とは!?)
人間の体には涙腺や唾液腺など、それぞれ重要な働きをする体液を分泌する線があります。
大腸の粘膜内にもこのような線があり、腫瘍化したものを大腸ポリープと呼びます。
つまり、大腸ポリープは大腸粘膜の分泌腺の細胞に発生する良性の腫瘍です。
大腸ポリープのうち腺腫が占める割合は約80%。
腺腫の全てががんになるわけではありませんが、がんになる可能性があります。
基本的に腺腫自体は良性のため、大抵良性のまま推移していきますが、何かの刺激によって腫瘍細胞に異変が生じることがあります。
その場合、最初は良性であっても、その後にがん化してしまうことがあります。
また、腺腫の大きさは数㎜〜1㎝止まりのため、それ以上大きくなることはありません。
この場合の腺腫はがんではないでしょう。
がん化している確率が高いのは腺腫の大きさが1㎝を超えるものです。
ただ例外的に、1㎝以下の小さな腺腫でも約10%はがん化するものもあります。
もし腺腫性のポリープを放置したまま拡大して1㎝以上になるなら、がん化する危険性が高まります。
腺腫性ポリープのうち、大腸がんになる可能性があるのは約9割と言われています。
何年間かかけてだんだん大きくなりますので、悪性化してがん細胞化しないうちに切除しましょう。
4.腺腫性の大腸ポリープを早めに切除した方が良い4つの理由とは?
4-1.大腸がんのリスクを減らす
腺腫の大腸ポリープが成長したものが大腸がんと言われています。
がんのリスクを減らすという観点から、ポリープがみつかったらできるだけ切除した方が良いでしょう。
米国の研究でもポリープを切除した人はしなかった人よりも76〜90%もがんになるリスクが減ったという報告があります。
大腸ポリープができると小さいものであれば症状はほとんどありませんが、大きなものは腹痛や下痢、お腹の膨張感や便が出にくくなるといった症状が現れることがあります。
できるだけ、早くポリープを見つけることが重要です。
大腸ポリープの大きさとがんがみつかる割合とは?
一般に、ポリープががん化する確率は大きさに左右されます。
ポリープ5㎜以下・・・0.6%。
ポリープ5〜9㎜・・・7%。
ポリープ10〜19㎜・・・24.6%。
ポリープ20㎜以上・・・35.8%。
他の報告でも、5㎜以下の場合がんは稀、10㎜の場合がん化は10%、20㎜の場合がん化は50%となっています。
つまり、大腸ポリープが10㎜以上になるとがんになる可能性が高いことが分かります。
特に、直腸やS状結腸に10㎜以上の大きなポリープができると、便の通過が妨げられるだけでなく、ポリープが便にこすられて血便の症状が現れることがあります。
なるべく早く専門医のいる病院を受診し、検査を受けましょう。
大腸ポリープを切除した人としなかった人との治療効果の違いとは?
日本の厚生労働省の調査でもポリープ摘出の効果が明らかになっています。
5年間にがんが発生した割合は、
ポリープを切除した人たち0.7%。
切除しなかった人たち1%
この時点での差はあまりないようです。
その後10年間の経過中がんが発生した割合は、
ポリープを切除した人たち2.2%。
切除しなかった人たち5.2%
つまり倍以上になっています。
大腸ポリープが5㎜以上の場合、内視鏡で見落とされることは稀です。
しかしながら、内視鏡で見つからなかった5㎜以下のポリープでも、約5年で大きさが倍になると言われていますので、4㎜のポリープが見落とされた場合は5〜10年後にがん化すると推測できます。
4-2.体への負担が少ない
大腸ポリープの検査は便潜血検査、注腸造影検査、内視鏡検査の3つです。
便潜血検査は簡単な方法で集団検診でも行われています。
便に消化管粘膜から出た血液が混入していないかを免疫学的・化学的に調べる方法です。
ほんの少量でも血が混じっていれば陽性反応が出るため、肉眼でも見えない微量の血液でも検出できます。
注腸造影検査は大腸全体にポリープができていないか調べることができます。
肛門からバリウムとも呼ばれる造影剤を注入し、エックス線造影を行います。
内視鏡検査は肛門から内視鏡を入れて、直腸から盲腸までの大腸全体を調べる方法です。
近年、主に行われているのは便潜血検査と内視鏡検査です。
特に、内視鏡検査の優れているところはポリープを見つけた場合、すぐに切除するという判断ができ治療もできることです。
小さなポリープを切除するときに使う内視鏡は開腹せずに摘出できるため、危険はほとんどありません。
(おすすめ記事→大腸がんを早期に発見するために!内視鏡検査や内視鏡的治療とは?)
1㎝以下のポリープは簡単にとることができます。
一方、がんになってからは開腹手術が必要になり、再発の可能性もあるでしょう。
そもそも大腸の粘膜はすべて同じ組織のため、ポリープががんになっていた場合、別の場所にまたできる可能性があります。
腸の壁は内側から順に粘膜や粘膜下層、筋層となっていて粘膜内にあるがんであれば、転移する可能性は非常に低く内視鏡で切除すると根治できます。
しかしながら粘膜下層よりも深い部分にあるがんの場合、周りに転移の可能性があり内視鏡の切除では根治できず、外科手術の必要が生じてしまいます。
4-3.再手術の負担が減る
内視鏡検査でがん化する可能性のあるポリープが見つかった時、その組織を切除し取り出して調べます。
一見がんとは思えないポリープでも、生検など摘出して病理検査をしてみなければ結論は出ないからです。
病理診断では切りとった部分を採取して顕微鏡などで調べます。
一部だけ採取してがんがみつかった場合、再手術で全て切除しなければならなくなります。
4-4.精密検査の必要が少なくなる
腺腫性ポリープを切除した場合、問題なければ次の再検査まで3年くらいです。
ただ、日本には明確な基準がありません。
米国では医療の経済効率から、日本よりも熱心に研究されており、内視鏡検査の所見によって、次回の内視鏡検査までの時期が推奨されているガイドラインがあります。
○危険性の低いポリープ(10㎜以下、1〜2個)を切除した場合の再検査は5年後
○危険性の高いポリープ(10㎜以上、3個以上、高度異形腺腫)を切除した場合の再検査は3年後
○多数のポリープができる特殊な体質のポリポーシスや、例外的に危険性の高い特殊な場合の再検査は1年後
一方、切除せずに残しておいたポリープがある場合、検査を受ける必要が大きくなります。
一般に、年に一回検査を受けることが勧められており、大腸の病気が潜んでいる場合、便潜血検査のたびに陽性の反応がでるため、そのつど精密検査を行い負担も増えるでしょう。
5.腺腫性の大腸ポリープの検査・切除方法とは?
内視鏡検査を行う数日前から食事制限をして、検査を行う当日に障害となる便を完全に除去するため、下剤ドリンクを2ℓ飲みます。
便が透明になったら、大腸全体を小型カメラで撮影して画像診断し、内視鏡的切除術を行います。
内視鏡に付いている円状のワイヤーを使って病変部を挟んで切り取ります。
一般的に、出血を防ぐため電気メスなどを使います。
病変の形や大きさに応じていろいろな道具を使い分けます。
5-1.「10㎜未満」のポリープの場合
5㎜未満の小さなポリープは内視鏡に付いている鉗子でつまんでとります。
この方法はコールドフォーセプスポリぺクトミーと呼ばれています。
切除直後わずかに出血しますが、数分で止まります。
粘膜下層を傷つけず粘膜の病変のみを切除できるため、出血や穿孔の可能性が少なく安全な方法と言われています。
一方、5㎜〜10㎜未満の隆起型ポリープはスネアを使います。
高周波の電流を流さずに切除します。
この方法はコールドスネア・ポリぺクトミーと呼ばれています。
5-2.数が多いポリープやつまんでもとれないポリープの場合
内視鏡に開閉可能の二つのカップが付いている鉗子があり、高周波の電流を流して焼き切ります。
カップの外側に熱が発生するため、切除とともに止血もできます。
また、カップ内に熱は発生しないため、切除した組織に損傷を与えることなくすぐに回収できます。
この方法はホットバイオプシーと呼ばれています。
焼き切った後が潰瘍になりますが、1〜2週間くらいで治るでしょう。
5-3.ポリープを摘出した後も定期的な検査が必要な理由とは?
がん化してなければ摘出することで完治するポリープ。
大抵、ポリープを切除した場合、数年後の再検査が勧められることがあります。
その目的は「新たにポリープができていないか」「前回、見落としていたかもしれないポリープが大きくなる前に治療しておきたい」というものです。
残念ながら、内視鏡でポリープを切除しても、見落としがないわけではないからです。
原因は、下剤が不十分だったために、便が残って病変が隠れてしまうことです。
2ℓの下剤を飲んでも、100%便がなくなるわけではないと言えるでしょう。
また、新たにできたポリープや見落としていたかもしれないポリープが倍化する速度にはばらつきがあります。
多くのポリープはゆっくり成長しますが、稀に比較的急速に成長するものもあります。
そのため、ポリープを摘出した後も定期的な検査を受けることが勧められています。
実際、ポリープを摘出した人の追跡調査の結果があります。
1〜3個のポリープを摘出したグループ・・・1〜3年後、約半数の人たちにポリープ発生
4個以上のポリープを摘出したグループ・・・3人のうち2人にポリープ発生
ポリープを摘出しても、引き続き定期的な検査を受けて早めに対処しましょう。
6.がんにならない大腸ポリープとは?
がんにならないのは腺腫性以外のできもののポリープです。
大腸ポリープが増え始めるのは働き盛りの40歳代からです。
年齢が上がるほどできやすくなり、50歳代ではほとんどの人にポリープがあります。
どちらかというと、たんぱく質や脂肪を摂りすぎる人、また便秘がちな人は要注意です。
便が滞留すると大腸が刺激されたり、便秘によって腸内細菌のバランスが崩れたりします。
(おすすめ記事→腹痛をともなう便秘や下痢に有効な薬とは?タイプ別おすすめ薬19個)
悪玉菌の増殖によって生成された毒素が大腸の表皮を傷つけるため、表皮を修復しようと細胞が過剰につくられポリープができやすくなります。
また、老化によってできる細胞のシワのような過形成ポリープがあります。
潰瘍性大腸炎やクローン病などで炎症が治る時に粘膜が膨らんで隆起するときの炎症性ポリープもあるでしょう。
放置していてもがん化しない良性のポリープですので、切らなくても問題ありません。
ただし、ポリープができたことがある人はできやすい体質ですので、定期的な検査をおすすめします。
ポリープができたことのない人でも、40歳はがん年齢と言われていますので、3〜5年に一回は検査を受けた方が良いでしょう。
6-1.腺腫性以外のポリープの検査方法とは?
まず、内視鏡検査を行います。
大腸全体を小型カメラで撮影して画像診断します。
その後、定期検査をしながら切らずに様子を見ます。
7.がんが認められていなくても切除する必要のある大腸ポリープとは?
家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)と呼ばれています。
遺伝によって起きる非常に珍しい病気です。
遺伝の確率は、両親のどちらか一方が家族性大腸腺腫症の場合50%になります。
また、遺伝と証明されている確率は70%ですが、家族歴がわからない場合も約30%あります。
若いころからポリープが100個以上、ある人は数百個もできるという特徴があります。
大腸内の粘膜に無数のポリープが、直腸から盲腸までびっしりと見られます。
これは腺腫の良性ポリープですが、この状態のまま放っておくと5〜10年で100%の確率で大腸がんになってしまいます。
実際に大腸がんのピークは60歳代と言われていますが、家族性大腸腺腫症の場合40歳代までにがんになって、そのまま治療しなければ50歳以前に亡くなってしまいます。
典型的な例ですが10代で大腸ポリープがどんどんできて100個以上になり、そのまま放っておいた人のうち40歳代になると約半数の人ががんになり、50歳代になるとほぼ全員、つまり100%がんになっているといった感じです。
そのため、がんが認められなくても予防策として大腸の全摘出を行います。
診断はまず大腸内視鏡検査で確認します。
大腸ポリープが多く確認され家族歴がある場合、家族性大腸腺腫症と判断されます。
大腸の全摘出で大腸がなくなると、便が下痢になってしまいますが、薬物療法や肛門トレーニングなどの他の治療法でうまく対処することができます。
また肛門と小腸をつなぐ場合は、永久的人工肛門を避けることができます。
遺伝的な病気のため、本人も家族もショックを受けることが多いでしょう。
子供に遺伝しないか、生活はどうして行けば良いかなど不安や心配を抱える人も少なくありません。
その場合は、専門医が悩みを聞いてくれたり、適切なアドバイスをしてくれたりします。
まとめ
自覚症状が極めて少ないポリープ。
定期検査などで偶然発見されることが多いでしょう。
特に気になる不調もなく、いたって健康だと思っていたのに検査結果で腸にポリープができていることが分かるケースです。
30〜40代の男性は働き盛りで仕事が忙しい毎日。
腸の健康を保って病気の発症を予防しましょう。
特に排便習慣と食生活に気を付けて規則正しく生活することが大切です。
また運動不足にならないようにしましょう。
HANA
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