背筋は胸部や大腿部と同じ大きな筋肉です。
筋力トレーニングは動作がシンプルで難易度が低く、フォームを習得しやすいものから始めましょう。
同時に、背面の内側にある筋肉(インナーマッスル)を鍛えると、正しい姿勢の維持やケガの予防にもなります。
1.背面の筋肉の働きとは?
筋力トレーニングの効果を上げるポイントは、鍛えている部位をしっかり意識することです。
1-1.僧帽筋
僧帽筋は首の後ろから肩や背中にかけての広い範囲に分布しています。
よく使われる動作は肩甲骨を動かしたり肩をすくめたりするときです。
ラグビーやアメリカンフットボールなど、ボディコンタクトがあるスポーツでよく使うでしょう。
首のケガを防ぐために強化部位として必須です。
1-2.広背筋
広背筋は体の側面である脇の下から脊髄にかけて背面を覆っている筋肉です。
よく使われる動作は前方へ伸ばした腕を身体の方へ引き寄せるときなどです。
柔道、競泳などで使われるでしょう。
2.背面の筋肉を効果的に鍛える方法とは?
僧帽筋や広背筋は身体の表面に分布している筋肉です。
表層筋肉群を意味するアウターマッスルとも呼ばれています。
アウターマッスルはスポーツの動作で大きな力を発揮するための原動力として働きます。
一方、インナーマッスルと呼ばれる身体の内側(深部)に分布する筋肉もあります。
日本語では深層筋群と言われ、動作中に関節の回転軸を安定させることや姿勢を一定に保つという働きがあります。
筋力トレーニングをするときは、アウターマッスルだけでなくインナーマッスルも鍛えましょう。
正しい動作の習得につながり、スポーツで起こりやすい障害の予防にもなります。
(おすすめ記事→筋肉増強成分「HMB」って知っていますか?効果的な筋トレメニュー教えます!)
2-1.背面の深層筋群(インナーマッスル)とは?
・勅上筋・棘下筋・小円筋
肩関節の部位にあり、肩関節の外旋や伸展、内転する働きをします。
・脊柱起立群
背中の部位にあり、体幹となり重要な働きをします。
・腰方形筋
脊柱起立群と同じ部位にあるが神経支配が異なっており、腰椎を屈曲する働きがあります。
2-2.インナーマッスルの脊柱起立群の筋力トレーニング法とは?
体幹である脊柱起立群を鍛える方法は6つあります。
・バックアーチ
バックアーチは背中を反り、全身で弓のようなアーチの形をつくって、手足を上げ下げするトレーニングです。
動作範囲が狭いため、小刻みな動きになりますが、特別な道具も必要なく、手軽に行うことができます。
① マットなど柔らかいものの上にうつ伏せになって寝転がり、手を横に開いて足は肩幅くらいに開き、視線はやや上げて前方を見ます。
② 息を吸いながら手足をゆっくり上げて体を反らせ、背中を中心としたアーチの形になった体勢を1〜2秒静止します。
③ その後、息を吐きながらゆっくり手足を下げます。
④ この動作を繰り返し行います。
回数…10〜30回を2〜3セット
留意点…手足を床におろしてしまうと、トレーニングの効果が半減するため、なるべく床につけないようにする。
腹筋と一緒にバランス良く鍛えるなら、腰痛の改善になりますが、腰痛持ちの人が無理に行うと悪化する可能性があります。
・バックエクステンション
体を反らせる動きによって、背筋の中でも特に数ある細かい背中の筋肉を全体的に鍛えることができ、脚も一緒にあげると、お尻の大臀筋やハムストリングにも効果があります。
体の背面にある筋肉は連携して働くため、立ち姿勢の改善や動作の正常を維持するのに役立ちます。
特に必要な道具はなく、フォームやテクニックも難しくありません。
初心者でも気軽にできるトレーニングです。
① 床にうつ伏せになり、手を耳の横に添えるか、あごの下あたりに位置させます。
② 息を吸いながら体を反らせて、胸と脚を同時に床から浮かせ、その体勢で1〜2秒静止します。
③ その後、息を吐きながらゆっくりと下げて、元の位置に戻します。
④ この動作を繰り返します。
回数…15回を3セット
留意点…あごが上がるとそれだけ動いたような気になるため、あごの角度を一定に保つようにします。
腰を無理に反らすとけがの原因になるため、最初は無理せず動かせる範囲から始めましょう。
・アーム&レッグレイズ
アーム&レッグレイズは腕(アーム)と脚(レッグ)を持ち上げたまま、体勢を維持することで背中の筋肉を鍛えるトレーニングです。
筋肉を鍛えると同時にバランス感覚も鍛えることができます。
また、腹筋にも効果があるため、ぽっこりお腹が減って、腰痛も改善します。
腕やお腹、お尻やもも裏、脚など上半身から下半身までの筋肉全体に効果がある万能トレーニングです。
① 床やマットの上に四つんばいの体勢になり、頭を下げず自然に視線をやや前、または手の甲に向けるとしやすくなります。
② お腹に力を入れて引っ込めるようにし、息を吸いながら、腕と対角線上になる脚をゆっくりと上げます。右腕の場合は左脚、左腕の場合は右脚といった組み合わせです。
③ 腕・脚が床と水平になる高さまできたら、5〜6秒静止してください。
④ その後、息を吐きながらゆっくり手足を戻します。
⑤ この動作を反対側の手脚でも行い、交互に繰り返します。
回数…12〜20回を2〜3セット
留意点…バランス感覚が必要なため、最初はふらふらと体勢を崩しやすくなります。
慣れてきたら、腕と脚を維持する時間が長くなるようにしましょう。
手脚を長く伸ばしても、周囲に物や壁に接触しないスペースを確保して行ってください。
手脚を上げて、維持している間は視線をしっかり前に向けて、背中の筋肉で手脚を支えることを意識します。
背中を反らし過ぎたり、丸めすぎだりすると腰への負荷が強くなって、腰痛の原因になるため注意しましょう。
・パワークリーン
ベンチプレスよりも効果が高いと言われるパワークリーン。
バーベルを使って行う筋力トレーニングで、別名ハイクリーンとも呼ばれています。
全身の多くの筋肉が関与しているため、全身を鍛えることができます。
また、瞬発的・爆発的な動きが必要なため、全身を使った瞬発力のアップやパフォーマンスの向上にもつながります。
ただし、パワークリーンの動作は複数の動きが関係するため、相応の筋力やテクニックが重要。
筋トレ中級者以上の人に向いているトレーニングです。
① 床の上にバーベルを置き、その前に立ちます。
② 両足を腰幅くらいに開いて、両足の指を気持ち外側に向け、足の甲の中心あたりがバーの下にくるようにします。
③ 膝を軽く曲げて腰を少し落とし、上体を前傾させて、肩幅より少し広めにバーを握ります。
④ 顔は正面を向き、肩はバーベルより前に出るようにし、肩甲骨を寄せて両腕をしっかり伸ばして、自然と背筋を伸ばすようにします。
⑤ 体重をかかと側へ移動させながら、股関節と膝関節を伸ばし、床からバーを上げていきます。
⑥ さらに腰を前に移動させて、膝もさらに伸ばしながらバーを上げていき、太ももの中間あたりまで上げます。
⑦ できるだけバーを体に近づけておき、ジャンプと肩をすくめる動作を爆発的に行ってバーを上げます。
⑧ すくめた肩の最も高い位置にバーを上げると同時に肘を外側へ曲げ、その下に体がくるようにし、腰と膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままにします。
⑨ バーベルを鎖骨の上あたりに来るようにキャッチして、股関節と膝関節をしっかり伸ばしていきます。
留意点…パワークリーンは正しいやり方で、しっかりとしたフォームを守らなければ、大けがにつながる可能性があります。
専門のトレーナーの指導を受け、時間をかけて身につけましょう。
最初は軽いバーを使ってフォームを習得し、徐々にウェイトを増やしていくと安全です。
また、大きな負荷がかかり過ぎるのを防ぐため、繰り返す回数を無理に増やすことは避けて、休憩の間隔もきちんと取りましょう。
・パワースナッチ
パワースナッチはパワークリーンよりもさらに高い位置までバーベルを上げる筋肉トレーニングです。
パワークリーンはバーベルを肩の高さまで持ち上げますが、パワースナッチは頭の上まで持ち上げるため、よりスピードが必要になります。
別名ハイスナッチとも呼ばれ、かなり難易度が高いため、筋トレ中級レベルできれば上級レベルの人におすすめです。
初心者はバーベルを床からではなく腰の前から持ち上げるハングの状態から始めましょう。
または、重りをつけずにバーだけで練習することから始めることもできます。
危険が伴うため、無理な重量設定は避けて、専門のトレーナーの指導のもとで行いましょう。
① 床の上にバーベルを置き、その前に立ちます。
② 両足を腰幅くらいに開いて、両足の指を気持ち外側に向け、足の甲の中心あたりがバーの下にくるようにします。
③ 膝を軽く曲げて腰を少し落とし、上体を前傾させて、肩幅より少し広めにバーを握ります。
④ 顔は正面を向き、肩はバーベルより前に出るようにし、肩甲骨を寄せて両腕をしっかり伸ばして、自然と背筋を伸ばすようにします。
⑤ 体重をかかと側へ移動させながら、股関節と膝関節を伸ばし、床からバーを上げていきます。
⑥ さらに腰を前に移動させて、膝もさらに伸ばしながらバーを上げていき、太ももの中間あたりまで上げます。
⑦ できるだけバーを体に近づけておき、ジャンプと肩をすくめる動作を爆発的に行ってバーを一気に頭の上まで持ち上げます。
⑧ 肘をしっかり伸ばし、頭上でバーベルをキャッチしますが、なるべく頭の真上ではなく、耳の後ろあたりになるようにします。
留意点…バーベルを持ち上げる時、腰を痛めないため、できる限り脚の近くを通過するようにします。
また、持ち上げる時は足と背中の筋肉を使い、腕の力はほとんど使いません。
頭上まで持ち上げる時も、床を強く蹴った反動を使うため、腕の力はあまり使いません。
ポイントは床を蹴った時、ちょっとだけジャンプし、一瞬宙を舞うような感じになることです。
・スクワットフロントスロー
スクワットフロントスローは、通常のスクワットにバーベルを追加して行う筋力トレーニングです。
大臀筋や大腿四頭筋、ハムストリングやヒラメ筋など下半身の筋肉全体を鍛えることができると同時に、前面にバーベルを持つことで、背筋も鍛えることができる効率的なトレーニング。
また、一つの動作に8秒以上かけてゆっくり行うため、高負荷になります。
① バーベルを鎖骨と腕の付け根の間に乗せて、両手のひらを返しバーベルを握ります。
② 背筋を伸ばしたまま。お尻を突き出し、膝が90℃になるまで上体を下げ、少しだけ膝が前に移動するようにします。
③ 足裏に注意を集中しながら上体を上げ、この動作を繰り返します。
回数…重量を上げて回数を減らすと効果が上がります。
留意点…上体を下げた時、膝がつま先より前に出ないようにします。
膝関節への負荷が大きくなり、けがの原因になるからです。
また背筋が反ったり、丸まったりすると負荷が大臀筋に伝わらず、腰や膝を痛めてしまいます。
動作中は背筋を伸ばしましょう。
3.背筋を鍛える筋力トレーニング法とは?
3-1.懸垂
広背筋を鍛える方法として効果的なのが懸垂です。
頭上から下方向へ引く力を養うことができます。
姿勢の安定性の改善や握力の強化にもつながるでしょう。
ほとんどのスポーツで必須の筋力トレーニングです。
回数…自体重×8〜12回を2〜3セット。
呼吸…体を上げるときに吸って、下ろすときに吐く。
留意点…体を引き上げているときは、胸を張って肩甲骨を内側に締めるように意識する。
① 鉄棒に両手でぶら下がり、手の間隔は肩幅よりやや広めにし、両膝は曲げておきます。
② 肘を曲げて、あごと鉄棒が同じ高さになるくらいに体を引き上げます。
3-2.懸垂(強度が低いタイプ)
通常の懸垂がもう少しでできそうな人にオススメです。
チューブの縮む力を利用するため強度が低くなります。
回数や呼吸、留意点は通常の懸垂と同じです。
① チューブを脇の下から背中へと通してそれぞれの手に巻き、鉄棒にぶら下がります。
② 手の間隔は肩幅よりやや広めにし、両足の膝をつけて90度に曲げます。
③ 肘を曲げて、あごと鉄棒が同じ高さになるくらいに体を引き上げます。
3-3.懸垂(強度がさらに低いタイプ)
懸垂が苦手な人はこのタイプから始めてみてください。
鉄棒にぶら下がるとき、足を床につけて体が斜めになるようにするため、強度が低くなります。
回数や呼吸、留意点は通常の懸垂と同じです。
① 足が床に着く高さの鉄棒に、腕を伸ばして体が斜めになるようにぶら下がります。
② 手の間隔は肩幅よりやや広めにします。
③ 肘を曲げて、あごの下をできるだけ鉄棒に近づけるように体を引き上げます。
3-4.ワンハンドダンベルロウ
ベンチに片手と片膝をのせて、ダンベルを下から上へと持ち上げます。
前方から手前へと引く力を養うことができます。
鍛えられる部位は僧帽筋や広背筋などです。
意外に腕よりも、肩甲骨周辺の筋肉の方が鍛えられるでしょう。
姿勢を安定させやすく、可動域が大きいのも特徴です。
特に相手を引きつけるときに使われる動作を強化する筋力トレーニングです。
回数…10〜15RM×10〜15回を2〜3セット。
呼吸…ダンベルを持ち上げるときに吸って、下ろすときに吐く。
留意点…背中が丸まらないようにする。
① ベンチの上に片膝と片手をのせ、もう片方の手でダンベルを持って肘を伸ばします。
② 胸を張ったままダンベルをお腹の横までゆっくり持ち上げます。
3-5.アップライトロウ(ダンベルを使うタイプ)
立ったまま左右それぞれの手にダンベルを持ち、肩をすくめるように真上へ引き上げます。
鍛えられる部位は僧帽筋や三角筋などです。
肩の筋肉や首・肩・背中の上部に広がる筋肉が鍛えられるでしょう。
腕を下から上へと引き上げる動作を強化する筋力トレーニングです。
回数…10〜15RM×10〜15回を2〜3セット。
呼吸…ダンベルを上げるときに吸って、下ろすときに吐く。
留意点…肩甲骨をうまく使って、肘が下がり腕だけで上げないようにする。
① 足を肩幅くらいに開いて手の甲を前に向け、左右それぞれの手にダンベルを持ちます。
② 肘を伸ばして肩の力を抜き、自然な状態にします。
③ ダンベルを肩の高さまで引き上げて、肘をしっかりと肩よりも高い位置に上げます。
④ 肩甲骨の動きを意識しながら、肩をすくめるように行います。
3-6.アップライトロウ(チューブを使うタイプ)
アップライトロウのダンベルをチューブに変えて行うこともできます。
回数や呼吸、留意点は同じです。
① 立ったまま、チューブを左右それぞれの手に巻いて肘を伸ばし、チューブの中央を両足で抑えます。
② チューブを肩の高さまで引き上げます。
③ 肩甲骨の動きを意識しながら、肩をすくめるように行います。
3-7.サイドレイズ(ダンベルを使うタイプ)
立ったまま左右それぞれの手にダンベルを持ち、肩を中心に真横へ持ち上げます。
鍛えられる部位は僧帽筋や三角筋などです。
腕を横へ振り上げるため、肩周辺の筋肉だけでなく首から肩を固定するときに必要な僧帽筋も鍛えることができるでしょう。
投げる動作も含め、腕を下から上へ引き上げる動作を強化する筋力トレーニングです。
回数…10〜15RM×10〜15回を2〜3セット。
呼吸…ダンベルを上げるときに吸って、下ろすときに吐く。
留意点…ダンベルを持ち上げたとき、勢いにつられて上体が後ろに反り返らないようにする。
① 両手にダンベルを持って手の甲を外側に向け、両足を肩幅くらいに開いて立ちます。
② 背筋を常にまっすぐ伸ばして、ダンベルを肩と同じ高さまで引き上げます。
③ 肩をすくめないようにして、肘が肩の真横にくるようにします。
3-8.サイドレイズ(チューブを使うタイプ)
サイドレイズのダンベルをチューブに変えて行うこともできます。
回数や呼吸、留意点は同じです。
① 立ったまま、チューブを左右それぞれの手に巻いて肘を伸ばし、チューブの中央を両足で抑えます。
② 手の甲を上へ向けて、肩を軸にして回転させるようにチューブを真横へ引き上げます。
③ 高さの目安は腕が水平になるくらいです。
4.背筋に効くストレッチ法とは
筋力トレーニングの後はクールダウンをしましょう。
筋肉内の疲労物質がすみやかに除去でき、筋肉の張りを解消するため疲労回復になります。
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背筋のストレッチは腕を前に出す動作です。
立ったまま両腕を前に出して静止します。
伸ばされる部位は、引く動作でよく使われる広背筋などですが、他にも肩胛骨の内側の菱形筋なども伸ばすことができるでしょう。
静止時間…10〜20秒。
留意点…背中が反らないようにする。
① 両足を肩幅くらいに開いて立ち、両腕をまっすぐ胸の前に出して手を組んで視線は正面に向けます。
② 肩甲骨が左右に開く感じを意識して、腕を前に出し静止します。
③ 手のひらは内側に向けて、誰かに手を引っ張られているような感覚で行います。
まとめ
背筋を鍛えるときは胸部や大腿部など大筋群をバランスよく鍛えましょう。
見逃されやすい脊柱のが深部にある筋肉のインナーマッスルです。
体幹である起立群など、背面にある内側の筋肉も鍛えると運動能力の向上につながります。
自分の体力や目的に合わせて、無理をせず続けていきましょう。
HANA
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